特別寄稿・物語論でプーチンを構造分析してみる 2 山川健一

世界はどこへ向かおうとしているのだろうか──

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「私」物語化計画 2022年3月11日

特別公開:特別寄稿・物語論でプーチンを構造分析してみる 2  山川健一

【東日本大震災から11年、そしてチェルノブイリ】

今日は3月11日だ。東日本大震災から11年が経過した。僕はあの震災を都内の仕事場で経験し、幕張メッセ近くの湾岸にある自宅に帰るのにとても苦労した。

自宅は液状化のために大きく傾いていた。近くの公団団地を借りて避難生活が始まった。

この年、山形にある東北芸術工科大学に文芸学科を創設し、僕は学科長として学科の運営をスタートしたのだが、家族や友人を失った学生達が何人もいた。さらに福島第一原発の事故が、学生達に重苦しくのしかかっていた。

津波に襲われた後のあの壮絶な海岸の光景を、僕は一生忘れることができないだろう。

そして今、チェルノブイリ原発で、現地時間3月9日午後2時頃に、ロシア軍によっておそらく意図的に外部電源が切断された。

非常用電源停止は48時間後である。「現地時間11日の午後2時、日本時間11日午後9時までに使用済み燃料の冷却停止から燃料の頭頂部(TAF)が気中に出るまでに何としてでも電源復旧しないと誰も近づけなくなる」──と『福島第一原発収束作業日記: 3・11からの700日間』(河出文庫)の著者のハッピーさんが、Twitterで警告している。

外部電源が喪失したチェルノブイリ原発構内には、作業員の人達が監禁状態にされている。非常用電源が停止すれば空調設備はじめ照明も落ち、インフラ設備すべてが機能しないだろう。これは命にかかわる問題であり、さらに彼らが不在だと原発をコントロールすることなど不可能だ。

これには、さらに恐ろしい見立てがある。

ウクライナ国営電力会社ウクルエネルゴの公式リリースによると、チェルノブイリ原発への電力供給はロシア軍が意図的に切断した可能性がある。なぜか? プーチン政権はチェルノブイリ原発を計画的に爆発させ、その責任をウクライナ政府に押し付ける作戦を遂行しているからだ──。

核兵器を使うぞと脅しをかけているプーチンなのだから、あり得ない話ではないと僕は思う。

僕らが生きているのはこんな狂気の世界である。その狂気をもたらしたのは言うまでもなくプーチン大統領だ。今週は再びプーチンについて書こうと思う。

 

【ロシアがウクライナを制圧したという前提で用意された国営メディアの予定稿の流出】

プーチン大統領の精神分析を試みる人達がいる。本人とは会えないので、表情や小刻みに震える手足の様子を映像で観察して診断しているのだ。明らかに正常ではないと多くの専門家が言っている。世界がこうなってくると、映像越しの診断もあながち無謀な試みとも言えない。

前回、僕は物語論による分析を試みたのだが、こんな感想メールをもらった。

 

勉強になりました。

物語論による分析がかなりの説得力を持ってしまうほど、今回の侵攻にはとても個人的な、感情的なものを感じる。しかし、日本も含む「西側」が目先の利益のために戦後秩序を切り売りしている状況がプーチンを決断に至らしめたのであり、仰る通りプーチン一人を排斥してよしとするべき問題ではないと思いました

──30代男性会員からのメール

 

ウラジミール・プーチンという現在進行形の物語の冒頭に配置される「欠落」は、「母なるロシア」である。これは先週書いたことだが、もう一度触れておく──続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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