特別寄稿・物語論でプーチンを構造分析してみる 山川健一

ロシアのウクライナ侵攻の歴史的背景をよく理解した上で、それでもプーチンに抗議し続けよう。ウクライナ の人々に、早く平和が訪れますように──

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「私」物語化計画 2022年3月4日

特別公開:特別寄稿・物語論でプーチンを構造分析してみる 2  山川健一

今週は『嵐が丘』分析を一旦お休みして、ウクライナで突如始まった戦争について私見を述べたい。

──(略)─

 戦況がこのまま進行すればプーチン大統領が核兵器を使用するかもしれず、そうなれば第三次世界大戦の可能性も想定しなければならない。プーチンは、ロシアが存在しない世界などあっても意味はない、と明言しているのである。
日本も無関係ではいられない。
こういう時、法律家は法の整備で問題を解決しようとするのだろうし、実業家は経済の立て直しを模索するだろう。僕らは文学の世界の住人なので、これまで学んできたナラトロジー(物語論)で、プーチンがもたらした今の世界を可能な限りの想像力を働かせて透視してみよう。

──(略)─

【プーチンを分析してみよう】
プーチンは1952年10月7日、ソビエト連邦の一部であるロシア・ソビエト連邦社会主義共和国のレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)に生まれた。69歳で、僕より1つ年上である。

──(略)─

 戦後も、レニングラードでは餓死者が増大した。プーチンの母親も栄養失調で倒れ、死んだと思われ埋葬されるところだった。直前に息を吹き返し、埋葬を免れたのである。
その様子を、幼いプーチンは目にしていた。
プーチン一家は貧しく、レニングラードの共同アパートで暮らした。ネズミが出るアパートで、伝染病をうつすネズミを見つけたら即座に殺すのが少年ウラジミールの仕事だった。先に殺さなければ自分が殺される、ということを幼いプーチンはネズミ退治で学んだのである。
独ソ戦の死者の群れ、死にかけた母、脚を奪われた傷痍軍人の父──それが子供だったプーチンの原風景であり物語の冒頭に置かれる「欠落」である。そして「先に殺さなければ自分が殺される」という恐怖が、彼の本能的な哲学となった。
当時の彼が母親の膝に座っている写真がロシアの公式サイトにアップされているが、およそ幸福そうな顔はしていない。
略奪者、殺戮者はいつも西側からやってくる。
ナポレオンにしろナチス・ドイツにしろそうだ。

──(略)─

プーチンにとって恐怖の大魔王は、いつも西からやって来るのである──。そして今の「大魔王」は、間違いなくNATOである。

──(略)─

【日本が危機を回避するために】
長くなった。そろそろ原稿を事務局に送らなければならない。
日本が危機を回避するための方法について書く。先日トヨタがサイバーテロに遭い工場停止したが──

──(略)─

 日本は日米安保条約によって西側の勢力の一員と見なされている。それが何とかここまで来られたのは、憲法9条があるからだ。憲法9条はビンの蓋だと言われている。日米安保条約があっても強固なビンの蓋としての憲法9条があるから、日本はフィンランドと同様攻撃を回避出来る可能性が高いのだ。
とにかくまず今は、憲法9条を死守することが大事だろうと思う。

──(略)─

 現代の戦争に勝利者はいない。戦争だけは、絶対に回避しなければならない。
2月28日に国連総会緊急特別会合初日の演壇に立ったポーランド代表は、ロシアの侵攻をドストエフスキーの『罪と罰』を引いて強く批判した。
「ラスコーリニコフは『自分は例外的に殺人を犯してもよい』と考えたが、最後は罪そのものによって罰せられたのです」と。
まったくその通りである。
ロシアのウクライナ侵攻の歴史的背景をよく理解した上で、それでもプーチンに抗議し続けよう。
ウクライナの人々に、早く平和が訪れますように──続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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