会員の皆さんの作品を紹介する 02 NSの処女小説「(会員による作品名非公開)」には舌を巻いた 山川健一

──NSはロックの世界の住人だったが、この作品で、文学の世界の住人にもなった。小説を書くことは大変だが、その努力は価値ある営みである。保証するよ!──

 

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2024年3月15日

特別公開:会員の皆さんの作品を紹介する 02 NSの処女小説「(会員による作品名非公開)」には舌を巻いた 山川健一

ロッド・スチュワートの、一夜限りの来日公演を東京・有明アリーナで観て来た。感動した。この来日公演は【One Last Time】と命名され、彼にとって13年ぶりとなる来日だ。

10代の頃からロッドの音楽を聴いてきて、ほとんどの歌の歌詞も覚えている。すると、コンサートの間中、過去のさまざまなシーンがフラッシュバックして、ロッドと共にタイムトラベルしているみたいであった。ミック・ジャガーはストイックで、ジョン・レノンはシリアスで、ボブ・ディランは偏屈で、ロッド・スチュワートは気が弱い。そこがいい。

そういう意味では、ロッドの楽曲の歌詞が実はいちばん文学的なのだと思う。そして、こんなに陽気で華やかなロックヴォーカリストは他にいない。

コンサートの後仲間とビールを飲みに行った。幸せな一夜であった!

 

──(中略)──

 

【NSの処女小説『(会員による作品名非公開)』】

今週推薦作として紹介するのは、NSさんの小説『(会員による作品名非公開)』である。

これは、彼が書く初めての小説だ。先週扱ったONの『(会員による作品名非公開)』同様、処女作とは思えない強いインパクトと完成度の高さを併せ持っている。

僕は驚愕する。

初めて書いて、こんな作品に仕上がるものか?

実は彼がまだ学生だった頃、卒論に僕の小説を扱いたいということでインタビューを受けたことがある。その後早稲田大学のロック講座に参加していたのを、SYさんが物語化計画に誘った。佐藤さんをはじめ、何人かが物語化計画と早稲田の両方に参加されているのだ。

ONとNSの共通点は、ロックの世界の住人だということだ。ロックキッズなのである。だから確固とした初期ロック衝動があり、それが小説を書く際にもオートマティックに発動したのかもしれない。

絵本を2冊出しているIMさんもパンクの世界の住人である。新宿のRSでDJをやっていたこともあるのだそうだ。

このロック系新規会員の3人はパワーがある!

表現のコアにロック衝動があると言っていい。

しかし、である。ほとんどのロック・ミュージシャンは小説なんて書かないし、読みもしない。だからロックの世界に住んでいればいいというものではない。だがやはり、ロックと小説の関係には何か秘密が隠されているような気がする。この問題は、僕は自分の問題として長らく考えてきた。

彼らの肉体には、知らず知らずのうちにナラトロジー(物語論)が血液のように流れているのではないだろうか。そうでなければ『(会員による作品名非公開)』も『(会員による作品名非公開)』も生まれようがないではないか。

ロック系新規会員の男子2人の共通のテーマは「隠された父の発見」であり、IMさんのテーマは「母性の回復」である。これは言うまでもなく、ナラトロジーの基本である────続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

 

山川健一『物語を作る魔法のルール 「私」を物語化して小説を書く方法』

 

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