特別公開:ドストエフスキー講義 01 文豪には4つの「ジェノバの夜」があった 山川健一
ドストエフスキーもまた文学と言う名の罪を背負って、神に許しを乞うたのである──
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「私」物語化計画 2021年3月12日
特別公開:ドストエフスキー講義 01 文豪には4つの「ジェノバの夜」があった 山川健一
今週からいよいよドストエフスキーに入る。だが僕はドストエフスキー論や『罪と罰』論を書くつもりはない。あくまでも、物語化計画のコンセプトに従い、ドストエフスキーの何が僕らに利用可能なのかということを皆さんに伝えたい。
この頃会員の皆さんの300枚以上の小説を何本か読んだが、同じような具体的な欠点を抱えている。列挙してみる。
1. 冒頭で明確な欠落が示されず、物語世界の説明になっている。
2. ストーリーは主人公たちの「行動」で示されるべきなのに、会話文主体で話が進んでいく。
3. キャラ設定が甘く、主要登場人物のイメージが被っている。
4. 登場人物たちの外見、部屋や街の描写がない。
5. 「結」に近い場所で偶然や神秘的な事象が描かれており説得力に欠ける。
まだあるが、これぐらいでやめておこう。
いや、もう一つどうしても書いておかなければならないことがあった。
6. 物語化計画における最初の課題「ジェノバの夜」は非常に良く書けているのに、小説になると途端にクオリティが落ちる。
こうした欠点をどう克服したら良いのだろうか。ドストエフスキーを構造分析すれば良いのである。ここには、小説に必要なすべてのものがある。
あるいは「私」探しの旅の地図がある。
あらかじめお断りしておくが、ドストエフスキーは立派な人物などではない。今ここにいたら相当に嫌な男で、友達になんてなりたくはない。僕にはどうしても許しがたいドストエフスキーの悪行があるのだが、これは後で触れる。
トルストイの方がはるかに信頼できる男で、友達に選ぶなら迷うことなくトルストイの方だろう。同時代を生きた2人には親交があり、ドストエフスキーはトルストイに金を借りたりしている。返したかどうか、怪しいものだ。
しかし、小説は、ドストエフスキーの方が圧倒的に面白いのである。もちろんこれには異論がある方もいらっしゃるだろうが、多くの人々が僕と同じ感想を抱いているのではないだろうか。
文学とは、不可思議なものである。
【農奴に惨殺された父親】
まず僕らが考えなければならないのは、ドストエフスキーにとっての「ジェノバの夜」とは何だったのかということだ。
そいつは複数回ある。彼の生涯を辿ることで、そいつを発見していこう。
フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキーは───続きはオンラインサロンでご覧ください)