特別公開:世界文学のイノベーター達 02 モリエールの喜劇は普通の同時代人の哀切さを描いた 山川健一

僕がこの原稿で訴えたいのは「モリエールという劇作家のことを知って欲しい」ということと、「モリエールの作劇方法は今でも有効だと認識して欲しい」ということに尽きる──

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「私」物語化計画 2021年2月5日

特別公開:世界文学のイノベーター達 02 モリエールの喜劇は普通の同時代人の哀切さを描いた 山川健一

2021年、まだ始まったばかりだというのに、大変なことになっている。新型コロナのパンデミックばかりではなく、経済的なパンデミックが世界を襲っている。格差社会がこれ以上広がると、世界各地で暴動や革命が起こるだろうと警告する経済学者もいる。本来「市場」は「社会」枠の中にあるべきなのに、肥大化した「市場」が「社会」を飲み込み格差が拡大してしまっているのだ。つまり僕らはGAFAに飲み込まれてしまった。

この問題について書き始めるとキリがないので、すぐに今週の本題に入ろう。

モリエールである。

僕がこの原稿で訴えたいのは「モリエールという劇作家のことを知って欲しい」ということと、「モリエールの作劇方法は今でも有効だと認識して欲しい」ということに尽きる。

それを知るのに最適な2つの映像作品を紹介しておく。

1つは、『モリエール 恋こそ喜劇』という映画だ。2007年にフランスで製作された「ロマンティック・コメディ映画」で、つまりモリエールの伝記映画だ。

17世紀フランスを代表する劇作家であるモリエールには、空白で謎とされる青年期がある。

モリエールは「王室付き室内装飾業者」の家系に生まれるが、世襲の権利を弟に譲り、演劇の世界で生きていく決意を固める。マドレーヌ・ベジャールという女優に出会い、恋に落ちたために、この決意を固めたとする説もある。

とにかくモリエールの劇団でまともな演技が出来るのはマドレーヌとモリエールだけだった。劇団の運営に失敗したモリエール達はパリから逃げ出すように13年間に及ぶ南フランス演劇修業の旅に出た。このうちの7カ月について何の資料もないのだそうだ。

この空白の7カ月をコアにフィクションを交えて描いた映画で、モリエールの作品のように切ない喜劇である。

 

【映画『モリエール 恋こそ喜劇』で知るモリエールの現代性】

『モリエール 恋こそ喜劇』のストーリーを簡単に紹介しよう。

22歳のモリエールは仲間とともに劇団を立ち上げたものの借金がかさみ、遂には投獄されてしまう。

窮地に陥った彼を救い出したのは金持ちの商人、ジュルダン氏である。彼には妻子がありながら、美貌の侯爵夫人セリメーヌに恋しており、彼女のために自作を披露したいので、借金を肩代わりする代わりにモリエールに演劇の指南役を頼みたいというのである。

この展開が既にモリエールのお芝居のようだ。

断われば再び牢屋送りになってしまうモリエールに選択の余地はなく、この仕事を引き受ける。

ジュルダン氏の妻子にこの件がばれないように、司祭タルチュフ(モリエールの代表作のタイトルでもある、いかがわしい宗教家の名前)を名乗り、末娘の教育係としてジュルダン家に潜り込む。

ここからがまたモリエール的な喜劇の世界なのだが、ジュルダン氏の妻エルミールが、モリエールの作品と知らずに、彼の書いた作品を絶賛したことをきっかけに、モリエールとエルミールは不倫関係となってしまうのだ。

ジュルダン氏の方は───続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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