初心者にもよくわかる文章教室 05 エッセイから私小説に架橋する
──日本語や日本文化の性格から生まれ、今や文学史に確たる位置を占めている私小説を、見直し学ぶべきである──
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2024年5月17日
特別公開:初心者にもよくわかる文章教室 05 エッセイから私小説に架橋する 山川健一
【三浦哲郎に学ぶ】
物語化計画では、最近、エッセイを書く人が増えている。日本文学では、小説とエッセイとの差異があまりない。私小説という領域があるからだ。僕自身にも、私小説風の作品がいくつかある。体験的に言うが、エッセイや私小説を書くのは、文章の修行の有効な方法だろうと思う。
エッセイから私小説に架橋し、そこからさらに完全なフィクションとしての小説に幅を広げる。そういうコースは有効である。
そのためには、コアになるエッセイを書く。これには無駄を省くことを、まず学ぶ必要がある。
原稿を書くのは大変だが、書いた原稿を削るのはもっと大変だ。あるいは書こうと思ったことを書かずに踏みとどまる努力をするのも大変である。
僕は若い頃、原稿用紙に万年筆で原稿を書いていたが、この書き原稿を削除するのはMacintoshで書いたテキストデータを消去するよりも勇気が必要だった。テキストデータなら場合によってはバックアップを取っておけば良いわけだが、原稿用紙に手書きされた文章を削除すると、こいつは永久に失われてしまう。だが、それでも、余計な部分は削除しなければならないのだ。
削除することによって、原稿を鍛える術を学んだ人は、その後格段に技術が上達する。小説にしてもエッセイにしても、一度書いた原稿の余計な部分を削ると作品は格段に良くなる。これを僕らは推敲と言うわけだが、推敲という作業は実はとても高度な知的な作業なのである。
今の人は読んだことがないかもしれないが、三浦哲郎という作家がいた。エッセイや私小説を書いた。僕は面識はなかったが、我が師・秋山駿氏の友人だったので、いろいろな話も聞き、身近に感じていた。
りんご畑に囲まれた青森の八戸で生まれた三浦哲郎は、2人の姉が自殺、2人の兄が失踪し、「病める血」に悩んだと言われている────続きはオンラインサロンでご覧ください)
山川健一『物語を作る魔法のルール 「私」を物語化して小説を書く方法』