小説を完成させるためにはカタルシスが必要だ 01(小説の作法) 山川健一
主人公も作者も読者も、その結末で気持ちがリリースされる。これがカタルシスである──
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「私」物語化計画 2023年1月27日
特別公開:小説を完成させるためにはカタルシスが必要だ 01(小説の作法) 山川健一
【なぜ小説を完成させられないのか】
これは自戒を込めて言うのだが、誰にでも書きかけのまま完成させられていない原稿があるだろうと思う。小説や批評やエッセイや──途中まで書いたのに、完成させられない原稿というものが、僕らの心の中に小さな黒い小石のようにぽつんと置かれている。
なぜ完成させられないのだろうか。
これには実は、物理的な、すなわち忙しくて時間がとれない等という現実的な理由のほかに、心理的な要因がありそうだ。
どの作品も全て書きかけのまま放置しているというのは論外だが、特定の作品だけが最後まで書ききれずにマッキントッシュの書類フォルダーの中に仕舞われている。
あなたにもそういう原稿がありませんか?
なぜこの作品をフィニッシュすることができないのか。その理由を思いつくままに、ランダムに記してみる。
・途中まで書いた原稿は、一部分で自分自身の暗部を描いており、そいつに向かい合うのがうっとうしい。
・大切な人との別れを描いた作品で、書き終えてしまうと、その人と本当に別れることになってしまいそうで悲しいから。
・原稿を書くという行為が、「鬱」のような状況をもたらすから。
・作品を完成させてしまうのが怖い。今のお前の実力はこの程度だという現実を受け入れたくないのである。
・書き終えたとしても、発表する場所がなく、誰に読んでもらうわけでもないので、モチベーションが上がらない。
他にも理由はいろいろあるだろうが、皆さんも一度「なぜこの作品が止まっているのか」内省してみて下さい。
原稿を完成させるかどうかは、個人の自由で、僕などがとやかく言うことでないのはわかっている。しかし、途中まで書いた小説の原稿を3本も4本も積み上げているようでは、小説は上達しない。
途中で止まったのには、何かしら精神的、あるいはシンプルに技術的な理由があるはずで、それを解決しない限り、次の作品も同じところで止まってしまうだろう。
技術的な理由というのは、人称の扱いがうまくいかないとか、描写のクオリティーが低いとか、会話が立体的にならないとか、そういうことである。
こんな場合は、技術的に何が問題なのかを探し出し、自分なりに対応策を検討してみることが近道である。僕にもそういうことが何度かあり、そのたびに具体的な対応策を考えだした。
例えば──続きはオンラインサロンでご覧ください)