『ソフィーの世界』で学ぶ哲学とファンタジー 8 『ソフィーの世界』で学ぶ哲学とファンタジー 8 アリストテレスはレトリックの父である 山川健一

アリストテレスはプラトンを「文学的」に先に進めたのである──

 

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「私」物語化計画 2021年10月22日

特別公開:『ソフィーの世界』で学ぶ哲学とファンタジー 8 アリストテレスはレトリックの父である 山川健一

【考えるレッスン】

新しい小説を書こうとするとき、最初にストーリーを考えてはダメだ。まずプロットを考えること、ということを僕は何度も言ってきたはずだ。

プロットとは何か。

簡単に言ってしまえばAとBの因果関係の羅列だ。

小説を構成する多くの因果関係の大元には、黒曜石の結晶のような、その作品のヘソみたいなものがある。まずそれを発見することが大事なのだ。

黒曜石を見つけるためには、どうすれば良いのか。考えるのである。深く、深く、深く考える。

なぜ毎日こんなに退屈なのだろう。

なぜ自分はこんなに怒っているのか。

子供の頃に傷ついたあの記憶がなぜ消えてくれないのか。

母さんは心から自分を愛してくれたのか、それともエゴイズムだったのだろうか。

人はなぜ欲望するのか。

性の欲求の対象があの女の脚だとして、エロスは彼女の脚に宿っているのだろうか。まさかな、あの女はそんなことは意識していない。太腿を蚊に刺されればボリボリ掻くだろう。ではエロスは欲望している自分の側の脳に宿っているのか。いやいやいや、あの脚がなければ俺は欲望なんてしないぞ──。ああ、そうか、エロスとは関係性の中に存在するのか。

人間は必ず死ぬのに、どうして今、努力しなければならないのだろうか。それって途方もなく無駄なことではないのか。

なぜこんなにも悲しいのだろう。

神は存在するのか。

しかしこんな残酷な現実を許している神とは、結局のところクソみたいな存在ではないのか。そうそう、そんなことを確か『カラマーゾフの兄弟』のイワンが言っていたはずだ。

生きる意味とは何だろう。そんなものがあればの話だが。

宇宙とは何か。

なぜ宇宙なんてものがスタートしたのか。

なぜ宇宙は存在するなんて面倒な選択をしたのだろうか。

そんな具合に、考える。

思索を積み重ねる。

その思索が黒曜石の結晶を発見出来た時に、プロットが起動するのだ。

それって、哲学だよね?

僕が哲学の歴史を紹介しているのは、「考える」レッスンをして欲しいからだ。考えないと、小説は生まれないのだ。

 

【ソクラテスの産婆術は神の一歩手前ではないか】

『「私」物語化計画』会員のNさんがコメント欄にデルフォイの神託について書いてくれた。ソクラテスの神託事件である。コメント欄にレスを入れるかわりに、長くなるのでここで僕の私見を述べる。

この神託事件は有名だが、プラトンによれば、それは次のようなものであった。

ソクラテスの仲間で彼の熱心な信奉者であったカレイポンが、あるとき、デルフォイの神殿に詣でて「ソクラテスより賢い人はいるか」と巫女に聞いた。神が巫女を通して「誰もいない」という託宣を下した。

カレイポンからこの話を聞いたソクラテスは、自分は「知恵のあるものではない」と自覚していたので、この神託に驚くのである。そして、考えに考えた。

この謎を解くために──続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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