特別公開:ヒーリングのためのストーリー《リトル・ハウス》を配信します。 山川健一

たまには瞑想の中でアムリタを飲んで、元気に過ごしてください──

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「私」物語化計画 2021年7月2日

特別公開:ヒーリングのためのストーリー《リトル・ハウス》を配信します。 山川健一

今週は、講義ではなく短いストーリーを配信します。

この1週間で、実は電話で話していた会員の方々が泣いた。3人。僕が泣かせたわけではない。小説を書くのは苦しい、努力しているのにうまくいかない、毎週の講義テキストは毎回繰り返し読んでいるのにうまくいかずに悔しい──と言って、電話だから相手の顔が見えるわけではないが、泣いているのがわかった。

泣きながら原稿を書いているという男性もいた。

私的な事柄を話してくれながら啜り泣く方もいらした。

小説の問題だけではなく、僕らはいま恐怖の中を生きている。COVID-19に感染せずにやり過ごすことが出来るだろうか。自分自身と周りの大切な人達が健康で暮らせるだろうか。経済的なことは大丈夫だろうか。小説を書き続けることが出来るだろうか。

色々な事柄が、普通に生きてきた人達を追い詰めているように見える。

僕は時々は思うのだ。「私」というものは、ほんの些細なきっかけでいとも簡単に「私」であることをやめてしまうのだ、と。
それは、もちろん、僕にしたって他人事ではない。

以前、鬱病になってしまった年上の女性の相談に電話で乗っていた時、何と言っていいのか困り、僕は咄嗟にお話を作って彼女に話して聞かせた。

その後回復した彼女が、あの時のお話はほんとうに良かったと誉めてくれたので、この話を自分で書き起こして『ヒーリング・ハイ』というオーラ視体験について書いた本に収録した。同じ話を、『歓喜の歌』の主人公が恋人に話して聞かせてあげる話として紹介した。

『「私」物語化計画』の複数の会員の方から「アムリタの話、どの本に載ってたんでしたっけ。また読んでみたいのですが」というメールをいただいた。

今週はこのヒーリング・ストーリーを配信します。

 

《リトル・ハウス》

山川健一

 

目を閉じて下さい。

あなたに、銀色の小さな鍵をひとつあげます。それをポケットに入れて下さい。

気持ちのよい丘を、一本の道が通っています。両側は草原で、ピンクや黄色や、白や、きれいな花が咲いています。その道を、あなたはゆっくりと歩いて行きます。

空は晴れ上がり、今日はとても暖かい日で、少し風も吹いています。

丘の向こうには、海が見えます。

しばらく歩いて行くと、林にさしかかりました。あなたの好きな形の、好きな匂いのする樹々が立っています。梢では、太陽の光がはねています。

林を通りすぎると、向こうに小さな家が見えてきたでしょう? 木で建てられた、小さな家です。広い窓には、あなたの好きな色のカーテンがかかっています。

ドアの前に立って下さい。

さっきあげた鍵をポケットから出して、鍵穴に差し込んで下さい。そう、その鍵はこの家の鍵なのです。ドアを開けると、板張りの家の中に入れます。

さあ、ゆっくり中に入って下さい。

広い窓の手前には、ちょうどあなたが休めるほどの大きさの、ベッドがひとつ置いてあります。

壁際にはテーブルがひとつと、椅子がひとつ。

それから、棚が置いてあります。

それでは、靴を脱いで、ベッドに横たわって下さい。風の音や、ほんの微かに波の音も聞こえます。このベッドは決して高価なものではありませんが、腕のいい職人が心を込めて作った、上出来のベッドです。横たわっているだけで、ぐんぐん疲れがとれていきます。

どうですか?

疲れはとれましたか?

それではベッドから起き上がり、棚の前に行ってみて下さい。棚に清潔な金色のポットと、コップがあるのが見えるでしょう。そのポットとコップを取って、テーブルの上に置きましょう。あなたは、椅子に腰かけるのです。

ポットの中には、水が入っています。アムリタという名前の、命の水です──(以下略)

山川健一デジタル全集 Jacks『ヒーリング・ハイ』

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