特別公開:キャラクター・メイキングの段階 3 『うばかわ姫』(越水利江子)と『デンデラ』(佐藤友哉)に現代の英雄譚を学ぶ 山川健一

「英雄のデザイン」によるキャラクターメイキングは、小説のスケールを一気に拡大させ魅力的なストーリーテリングを実現する──

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「私」物語化計画 2021年6月11日

特別公開:キャラクター・メイキングの段階 3 『うばかわ姫』(越水利江子)と『デンデラ』(佐藤友哉)に現代の英雄譚を学ぶ 山川健一

キャラクター・メイキングの具体的な方法には段階があるという話の続きです。

  1. 神のデザイン
  2. 英雄のデザイン
  3. ゲマインシャフトによるデザイン
  4. ゲゼルシャフトによるデザイン
  5. 意識の対象化によるデザイン
  6. 「ジェノバの夜」の対象化

このそれぞれの段階のうち、『「ジェノバの夜」の対象化』と『神のデザイン』については既に講義したので、今週は『英雄のデザイン』だ。

神が主人公だった物語、つまり神話を英雄譚にしたのはシェイクスピアだった。これを普通の人々を主人公にしたのがモリエールの喜劇である。

モリエールはシェイクスピアへの憧れを隠さなかったが、やはりシェイクスピアの功績は大きかったのである。

しかし、僕らが『リア王』を書くわけにもいかないので、現代小説における英雄譚とはどんなものかということから考えなければならない。

英雄譚はスケールが大きく、したがってストーリーの起伏があって面白く、そのためには主人公のキャラクターが突出していなければならない。過去の時代から探し出すにせよ現代の人物群像から探し出すにせよ、とにかくまず「英雄」のキャラクターメイキングから出発しなければならないのである。

そんな小説があるのか──としばし考えるが、これがあるのです。

話を具体的に落とし込まないとわかりにくいので、今週は2本の長編小説を題材に切り込んでみようと思う。越水利江子さんの『うばかわ姫』と、佐藤友哉さんの『デンデラ』だ。

 

【越水利江子『うばかわ姫』、奇跡のキャラクターメイキング】

あらかじめ申し上げておくと、越水利江子さんは僕の戦友みたいなもので、僕は彼女の小説のファンなので、冷静な批評など書きようがないのである。しかし、控えめに言って『うばかわ姫』は傑作である。超傑作、大傑作である。

越水利江子がド新人だとして、どこかの文学賞にこの作品を応募したら、あっさりグランプリをとるだろう。同世代の同業者として、僕は彼女に嫉妬する。この作品が刊行されたのは2015年だが、どうしたら大人になってからこんな瑞々しい作品が書けるのだろうか!

越水利江子は児童文学の作家だが、この小説は児童文学ではなく一般向けの時代小説である。ファンタジーであり、僕は彼女による『女の一生』なのだと思っている。

もしもあなたに『うばかわ姫』が書けたら、すぐにデビュー出来て、売れっ子作家になれる。ではどうやったらこいつが書けるのか? それにはまず『うばかわ姫』を読んで構造分析し、多層的なキャラクターメイキングの方法を学び、卓越した描写を学ぶことである。

もちろん簡単なことではない。しかし挑戦してみる価値はある。『うばかわ姫』は、『「私」物語化計画』の会員全員の必読書である。

この後、ネタバレを含みます。

 

主人公は誰もが羨む美貌の少女、野朱だ。文庫のカバーに描かれている少女だ。物心つかぬうちに両親を失い、京の商人の養子として育てられた野朱は、東国の武家に見初められ、側室として輿入れする途中、夜盗に襲われてしまう───続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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