特別公開:自伝の書き方を教えます3 山川健一

短いものでもいいから、自伝を書くべきだと僕は言っている。そいつを仕上げることが出来れば、これからあなたが書くすべての小説のコアを確定することが出来る──

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「私」物語化計画 2020年7月3日

特別公開:自伝の書き方を教えます3 山川健一

今週は、小説執筆にも応用できる自伝の方法論についてレクチャーしたい。

先週、「28の女に自伝が書けるわけないじゃないですか」という元教え子の言葉を紹介したが、そんなふうに思っている人は案外多いのではないだろうか。

「ごく平凡なサラリーマンをやってきた自分に自伝が書けるわけないではないか」

「自伝に書くとしたらあの大恋愛しかないけど、もう10年以上前の話だし、このままずっと秘密にしておくほうがいいわ」

「俺はミュージシャンとして波瀾万丈の人生を送ってきたわけで、別にドラッグの事でもセックスの事でも隠す気はないが、何から書けばいいのかわからないし、そんなストーリーを誰が読むんだ?」

「清廉潔白な人生を歩もうとしたのに、これまで歩いてきた道のりはその反対だった。もう思い出したくもない」

会員の方々の、そんな声が僕の耳元で聞こえている。

それでは僕の方から質問するが、28歳の女には自伝は書けないが、小説なら書けるのかい?

平凡なサラリーマンという属性の下にあなたはどんな欲望と悲しみを隠して生きて来たのか?

秘密にするも何も、忘れてしまえばその大恋愛はなかったことになりますが、それでもいいわけ?

セックス、ドラック、ロックンロールの真ん中で溺れそうになりながら、おまえが生き延びて来られたのはなんで?

それを書くのが「自伝」だ。

ちなみに、上記のメッセージはそれぞれ特定の会員の方の顔を想い浮かべながら書いた。身に覚えのある方は胸に手を当ててよく考えてみること。

 

【表現の最も重要で深い秘密】

アマチュアの方々の書く小説、学生たちが書く小説を読むと、なんとか形を整えようと努力する一方で、肝心の「何を書きたいのか」というポイントがブレている場合が多い。推理小説で言うならば、なぜ犯人は恋人を殺害したのか──その動機が曖昧なままなのだ。

小説を読んで感動するのは、秘められた「動機」以外の何物でもない。いくらトリックが秀逸でも、描写が上手でも、「動機」が不明な推理小説に僕らが感動する事は無い。それと同じで、他のジャンルの小説にも推理小説の「動機」に相当するコアな感情が必要なのだ。この『「私」物語化計画』の連続講義で、僕はそれを「隠された父の発見」と表現したはずだ。

文法上の間違いを訂正したり、余計な部分を削除したり、構成上の相談に乗ったりするのはそんなに難しいことではない。言葉というのはそもそも誰かに何かを伝える道具なのだから、その道具の正しい使い方をコーチすればいいわけだ。

だが、何を書きたいのか、動機は何か、この作品における隠された父とは何者か──という基本的な問題はあなた自身にしかわからない。

だから短いものでもいいから、自伝を書くべきだと僕は言っている。そいつを仕上げることが出来れば、これからあなたが書くすべての小説のコアを確定することが出来る。

これが、すべての表現の最も重要で深い秘密──続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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