特別公開:僕らは物語の力によって生き延びる 山川健一

7回にわたった「レトリックを身につける」が終わったので、今週は休憩というか、最近思うことをエッセイ風に書くことにしたい。

何を書きたいかというと、端的に言って、僕は皆さんのことをとても心配しているのだということを書きたいのだ。

お元気ですか?

心と体と、どちらも大丈夫ですか?

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「私」物語化計画 2020年3月20日

特別公開:僕らは物語の力によって生き延びる 山川健一

7回にわたった「レトリックを身につける」が終わったので、今週は休憩というか、最近思うことをエッセイ風に書くことにしたい。

何を書きたいかというと、端的に言って、僕は皆さんのことをとても心配しているのだということを書きたいのだ。

お元気ですか?

心と体と、どちらも大丈夫ですか?

WHOによってCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)のパンデミックが宣言され、日本では小中高それぞれの学校が一斉に休校になり、不安が広がっている。

そんな折、『「私」物語化計画』で現役編集者のインタビューに応じてくれた浦賀和宏さんが脳出血で亡くなった。2月25日のことだ。浦賀さんはおもに推理小説をお書きになっていたが、まだ41歳だった。

夜明け方の4時ぐらいにTwitterでフォローしたら、2分後にフォローバックしてくださり、驚いたものだった。

そして3月9日に、誉田龍一さんが心不全のため亡くなった。57歳だった。

誉田さんは脚を怪我して、現役編集者が年明けに会った時には杖をついていたそうだが、「これでもだいぶ良くなったんですよ」と、足以外はすこぶる元気そうだったとのことだ。

誉田さんは一人暮らしで、確か都営新宿線沿線にお住まいだったはずだが、毎週日曜日には必ず大阪のお母様に電話をしていた。かかってくるはずの電話がなかった日曜日にお母さんが心配して警察に連絡し、亡くなっているのが発見されたとのことだ。

『「私」物語化計画』のイベント、スクーリングにもほぼ毎回参加して下さり、親しくされていた会員の方も多かったろう。穏やかな性格と柔和な表情が忘れられない。本当に温かく、優しさに溢れた方だった。

そんな誉田さんだが激しい部分を内部に隠しているようなところがあり、ストーンズが好きだった。それで僕と友達になってくれた。

 

それにしても──このオンラインサロンの身近なところで、立て続けに2人の小説家が亡くなった。どちらも僕より遥かに若かった。僕は言葉を失う。お二人とも書きたいものがまだたくさんあったろう。

会員の皆さんにとっても大きな衝撃のはずで、しかも皆さんは小説を書く繊細な方々ばかりで、一応リーダーの僕は皆さんの精神的な動揺を想像し、心配しています。

親しい友人の死、社会状況の著しい悪化が僕らを圧しているのだ。

 

東日本大震災から9年が経った。

死者 1万5,899人
行方不明 2,529人
震災関連死 3,739人
現在の避難生活者数 4万7,737人

 

多くの犠牲者の方々に、改めて哀悼の意を表したい。そして今、新型コロナウィルスに立ち向かいながら日本は同じ過ちを繰り返している。

当時の「放射線濃度を測らない」はコロナの「PCR検査をやらない」と同じだろう。初期被曝の実態が不明になってしまったように、感染実態が不明のまま日本は迷走している。

日本で「専門家」と言われる人達が「御用学者」と同義だということも同じである。

今回の新型肺炎は、深刻な被害を日本と世界の全体にもたらしているというのに、それでも「アンダーコントロール」「感染は抑えられている」の嘘を押し通す安倍晋三首相とその内閣。

狂気の列島で僕らは生き延びなければならない。

 

自民党のあるベテラン議員は、「アベノミクスが株価を偏重し、産業創出を軽視してきた。一気に株安になると、この国には何も残らない」と述べたそうだ。

経済恐慌が日本と世界を襲いつつある。

世界の金融ニュースを伝える『ブルームバーグ』は、米政府が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が「1年半以上続く」と予測したと報じた。

長期戦を覚悟しなければならない。オリンピックどころの話ではない。海外から物資が入って来なくなる可能性がある。人工呼吸器などの医療機器もそうだが、日本は食糧自給率が低いから、まずそれが心配だ。これまでのツケが一気に回ってきそうだ。

ドイツのメルケル首相は議会で「人口の60〜70%が新型コロナウイルスに感染する」との予測を発表したそうだ。同じような予測は英政府や米大学も出している。

多くは無発症か軽症だろうが、70%感染まで2年かかるそうだ。米政府の「1年半以上続く」と半年誤差があるが、いずれにしてもこの不安定な時期は数ヶ月では終わらないということだ。

オリンピックのためか東京でのデータは隠蔽されてるとしか思えないのだが、東京都ではピークを迎えたときには1日当たりの外来患者がおよそ4万5,000人、入院患者がおよそ2万人、重症患者が690人余りと推計されている。

僕らがいまだかつて出会ったことがない、想像を絶する大きな危機である。

 

日本政府は18日、イギリスやフランスなどヨーロッパのおよそ30か国とエジプト、イランを新たに入国制限の対象に加えた。すでに発給しているビザの効力を停止するほか、日本人を含む入国者全員に入国後14日間、自宅などで待機するよう要請する。

公共交通機関の利用を避けることも求める。

もう3月も半ばを過ぎている。それでいながら「完全な形」でオリンピックをやると安倍首相は言っているわけで、この論理的な破綻に気がつかないほど官邸は機能不全に陥っているのだろうか?

日本のコロナの感染者数は政府にコントロールされていると、海外主要メディアは伝えている。BBCもCNNも日本の感染者数は「表向きだ」と報じている。

WHOは遂に「検査、検査、検査。疑わしきはどんどん検査」と勧告した。これはオリンピックを前提に検査をしない日本を批判しているのだろう。アメリカでも専門家の推奨は「検査拡大、感染者把握」である。

WHOが安倍内閣の「検査を抑制し感染者数を少なく見せる」隠蔽戦略を批判し、日本は国際的な信用を失い、株価は急落、五輪も不可能になりつつある。中韓に大きく遅れをとった後進国・日本。

その現実に国民は目を瞑っている。

安倍内閣が国民に本気で牙を剥くのは五輪の中止(延期)が決まった後だろうと僕は思っている。

PCR検査を解禁し感染者数が跳ね上がり、ここで緊急事態宣言を出す。私権を制限する戒厳令下なみの恐怖政治が始まるだろう。

 

はっきりしたエビデンスがあるわけではないのに、学校は閉じられ、コンサートや演劇やイベントが中止に追い込まれている。

劇作家・演出家の野田秀樹さんは、政府が新型コロナウイルス感染対策として文化イベントの自粛を要請したことに対し、「一演劇人として劇場公演の継続を望む」との意見書を公式ホームページで発表した。

政府の要請を受け、野田さんが芸術監督を務める東京都立の東京芸術劇場などの国公立劇場、松竹主催の歌舞伎、宝塚歌劇団、劇団四季といった民間大手のほとんどが3月までの公演中止を決めた。

意見書には、感染症の専門家と協議して対策を十全に施すことを前提とした上で、こう書かれている。

演劇は観客がいて初めて成り立つ芸術です。ひとたび劇場を閉鎖した場合、再開が困難になるおそれがあり、それは『演劇の死』を意味しかねません。

これは音楽も同じだ。東京ドームのコンサートからライヴハウスまで、音楽も観客の存在なしに成立しない表現だ。

ミュージシャンや俳優たちは、一気に経済的な苦境に追い込まれている。僕も友人達のことを心配している。

さて、小説はどうだろうか。小説は誰かが書き、それを誰かが1人で読むものだ。だから一見、今回の新型コロナ肺炎とは関係がないように見える。だがそうではないのだ。小説とは…続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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