『ソフィーの世界』で学ぶ哲学とファンタジー 4 ギリシアの自然哲学から論理の一貫性を学ぼう 山川健一
僕らも、せめて一編の小説の中ではロゴスが破綻しないようにしないとね!──
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「私」物語化計画 2021年9月24日
特別公開:『ソフィーの世界』で学ぶ哲学とファンタジー 4 ギリシアの自然哲学から論理の一貫性を学ぼう 山川健一
先週はヘラクレイトスのロゴスの話だった。
大切なことなので復習しておくが、
──(中略)──
それを探し出し、このロゴスに言葉を与えることが必要なのだ。そいつを一度設定したら、決して逸脱してはならない──というわけで、今週はエンペドクレスからである。
──(中略)──
【エンペドクレスの愛と憎しみ】
エンペドクレスはB.C.450年頃の哲学者で、詩人でもあり、医者であり、民主政治を導いた政治家であり、呪術的な能力を持った宗教家でもあった。
彼は民衆のために戦う人だった。
セリヌスという町の住人が、付近を流れる汚染された川から広がった疫病に悩まされていた。それを聞いたエンペドクレスは、私財をなげうって土木工事を行った。別の川の流れを汚染された川に引き込み、中和させて疫病を鎮めたのである。
金の冠を頭に戴き、紫色の衣に金のベルトを巻き、デルポイの花冠を携えて諸都市を巡り歩いた伊達男でもあった。
今の日本にエンペドクレス一人がいれば、状況は大きく変わるだろうにね! 中曽根さんが言うように、彼は包容力がある人なのだ。
エンペドクレスの言葉である。
「存在は決して変化しない。それはそのとおりだろう。水は、どこまで小さくしても『水』だろうし、土はどれだけ小さくしても『土』だろう。しかし、実際に、この世界には、多種多様なものが存在している。ならば、『水』や『土』などの、決して変化しない最小単位の根源(元素)があり、それらが結合したり、分離したりして、多種多様なものに見えるという考えはどうだろうか?」
『ソフィーの世界』
エンペドクレスが、元素だと考えたのは、「地・水・火・風」の4つであった。
「万物は地・水・火・風の4つの元素からなり、自然にはふたつの力がはたらいている」
この「ふたつの力」の定義が素晴らしいのだ。
愛→結合
憎しみ→分離
物質のアルケーは火、水、土、空気の四つの「リゾーマタ」からなり、それらを結合する「ピリア」(愛)と、分離させる「ネイコス」(憎しみ)がある。
愛と憎しみによって四つのリゾーマタ(四大元素)は、集合離散をくり返す。
四つのリゾーマタは新たに生まれることはなく、消滅することもない。宇宙は愛の支配と争いの支配とが継起交替する動的反復の場なのである──とエンペドクレスは考えた。
太陽は巨大な火の塊であり、月よりも大きい。天は氷のように冷たいものが集まってできており、星々は火のリゾーマタが集まってできている。
さらに特徴的なのは、魂は頭や胸ではなく血液にやどっていると考えたことと、魂の転生説を支持したことだろう。
「わたしはかつて一度は、少年であり、少女であり、藪であり、鳥であり、海ではねる魚であった」と述べた。
あなたが書く小説に、エンペドクレスのような人物を登場させてはどうか? で、こんなふうに言うのである──続きはオンラインサロンでご覧ください)