特別公開:キャラクター・メイキングの段階 4 ゲマインシャフトに蹴りを入れろ、ゲゼルシャフトは徹底的に利用せよ! 山川健一

僕らは生き延びなければならない。そのためにこそ小説を書くのだ──

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「私」物語化計画 2021年6月18日

特別公開:キャラクター・メイキングの段階 4 ゲマインシャフトに蹴りを入れろ、ゲゼルシャフトは徹底的に利用せよ! 山川健一

キャラクター・メイキングの具体的な段階のおさらいである。

  1. 神のデザイン
  2. 英雄のデザイン
  3. ゲマインシャフトによるデザイン
  4. ゲゼルシャフトによるデザイン
  5. 意識の対象化によるデザイン
  6. 「ジェノバの夜」の対象化

今週は、「3. ゲマインシャフトによるデザイン」「4. ゲゼルシャフトによるデザイン」について書きます。

 

【現代のゲマインシャフトとは】

神話があり、そいつが英雄譚に進化し、やがて普通の人間が主人公の物語が誕生する。この普通の人間が登場する時に必要なのがゲマインシャフトとゲゼルシャフトだ。

あなたが小説のプロットを立てる時、家族や近所の人達がほぼ確実に登場するだろう。それがゲマインシャフトである。

日本でも明治以降、夏目漱石にせよ島崎藤村にせよ、ゲマインシャフトが小説の登場人物達の主軸だった。

厳格な父親、優しい母、弟想いの兄や姉、郷里の親友などだ。

しかし、個人がクローズアップされ単身者が多い今の社会で、こいつは既に崩壊していると考えた方がいい。

夫婦別姓すら実現出来ずに世界に恥を晒している日本だが、小説の世界ではもちろんもっと先を行っている。

厳格な父ではなく、リストラされ肩を落とし苦悩している父の方がリアルなのだし、優しい母よりも自分の内面的な問題で精一杯の母親の方がリアルである。

代わりに僕が小説のテーマとして今普遍的だと思うのは、崩壊してしまった父親像と母親像である。

娘に性的な視線を向ける父親、息子を支配しようとする父親、自分の欲望を先行させ娘に嫉妬する母親、息子を大人になった後も支配下に置きたい歪んだ愛情を克服出来ない母親。

こういう例が呆れるほど多い。

子供達は押しつぶされてしまい、自分が父親や母親になった時に自分の子供に同じ過ちを繰り返してしまう。負の連鎖である。『私を見て、ぎゅっと愛して』(七井翔子)はそんな現場で書かれた手記だった。

男性の場合は父親の存在が、女性の場合は母親がトラウマになっている──という深刻なケースが多いのは、ゲマインシャフトが崩壊しているからだ。

一旦文学から離れるが、父親や母親とのこんがらがった糸をほぐすのはまず不可能だ。こいつはむしろ放置してしまった方がいい。

ビートルズが1970年3月にシングル盤として発売した「レット・イット・ビー」(Let It Be)という曲がある。レノン=マッカートニー名義となっているが、ポール・マッカートニーによって作詞作曲された。

そのままにしておきなさい──これしかないと僕は思う。糸はこんがらがったままにしておかないと、下手にほぐそうとすると切れてしまう。あなたはまた怪我をして血を流すことになる。

なぜ僕がこんなことを書くかというと、複数の会員の皆さんからそういう悩みや相談のメールを頂いているからだ。あなただけではない。ゲマインシャフトが崩壊している現代、水面下にあるこの問題は想像以上に大きい。

ファッキン・パパ&ママのことなんか放置して、別の大切な人を見つけよう、限りある時間をいちばん大切なことに使おう──というのが僕の意見である。

ここで文学に戻る。

普通の生活を送る分にはこれは案外と可能なことかも知れないが、いざ小説を書こうとして───続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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