ダーウィンを理解すると小説が豊かになる 03 「愛」という不可解な観念と「結婚」 山川健一
──人類の進化にとっての決定的な戦略になっていることには疑いの余地がない──
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2024年6月21日
特別公開:ダーウィンを理解すると小説が豊かになる 03 「愛」という不可解な観念と「結婚」 山川健一
【チンパンジーの売春】
先週のチンパンジーの話の続きである。こんな話がある。
アメリカのモンキー・センターで、チンパンジーの研究を行っていたグループが面白い実験をした。
チンパンジー達に簡単な労働をさせ、そのご褒美にコインをあげる。そのコインで、彼らは専用の自動販売機でピーナッツが買える。つまり、この実験の目的は、チンパンジー達が貨幣というものを認識できるかということにあった。
だが、実験の結果は思わぬ発見をこのグループにもらたすことになった。
労働してコインを受け取ったチンパンジー達は、さっそく自動販売機でピーナッツを手に入れた。彼らは、いとも簡単にチンパンジーが貨幣を認識できるということを証明してみせたのである。
だが、研究者のグループのあるメンバーが、労働してコインを受け取るチンパンジーには圧倒的に雄が多いことに気がついた。討論に討論が重ねられ、彼らはふたつの可能性を指摘することになった。
[1] 雌のチンパンジーは雄のチンパンジーよりもピーナッツが好きではない。
[2] 雌のチンパンジーは雄のチンパンジーよりも知能が低い。
だが、これらの可能性は、ある夜、チンパンジーの宿舎を観察していた一人の助手の発見によってあっさり否定されてしまうことになる。
その発見とは──。
雄のチンパンジーと雌のチンパンジーが交尾し、その後、雄が雌にコインを渡していたのである。
つまり、雌のチンパンジーは売春していたわけだ。報告を受けたグループのメンバーは、労働していないはずの雌のチンパンジー達の多くがコインを持っていることを突き止めた。
面白い話であると僕は思う。これが人間の話だったら面白くも何ともないのだろうが、チンパンジーだと面白い。
人間だとちっとも面白くなく、同じような話なのにチンパンジーだと面白いのはなぜなのだろうか?
これはむずかしい問題である。
それはきっと──続きはオンラインサロンでご覧ください)
山川健一『物語を作る魔法のルール 「私」を物語化して小説を書く方法』