現役編集者による夏季特別寄稿1:山田宗樹氏インタビュー

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『 毎回、山川さんのテキストを楽しみにされている皆さまには本当に申し訳ありません。

今回と次回の2回は、山川さんが夏休みを取りたいということで、私・永島賞二がテキストを配信いたします。

とはいえ、このサロンは山川さんによる小説家養成講座ですので、私が小説のノウハウを書くことははばかられます。

ですので、私が担当している、第一線で活躍されている作家の方に、インタビューをお願いし、作家志望の方へのアドバイスなどを聞いてみました。

今回ご登場いただくのは、山田宗樹さんです。』

 

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「私」物語化計画 2019年8月9日

特別公開:現役編集者による夏季特別寄稿1:山田宗樹氏インタビュー

毎回、山川さんのテキストを楽しみにされている皆さまには本当に申し訳ありません。

今回と次回の2回は、山川さんが夏休みを取りたいということで、私・永島賞二がテキストを配信いたします。

とはいえ、このサロンは山川さんによる小説家養成講座ですので、私が小説のノウハウを書くことははばかられます。

ですので、私が担当している、第一線で活躍されている作家の方に、インタビューをお願いし、作家志望の方へのアドバイスなどを聞いてみました。

今回ご登場いただくのは、山田宗樹さんです。

<山田宗樹氏 プロフィール>
1965年愛知県生まれ。98年「直線の死角」で第18回横溝正史ミステリ大賞を受賞。2003年に発表した『嫌われ松子の一生』が映画化、ドラマ化され大ベストセラーになる。13年「百年法」で、第66回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。近著に『ギフテッド』『代体』『人類滅亡小説』がある。

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山田宗樹『嫌われ松子の一生』

山田宗樹『嫌われ松子の一生』

山田宗樹『ギフテッド』

山田宗樹『ギフテッド』

山田宗樹『代体』

山田宗樹『代体』

山田宗樹『人類滅亡小説』

山田宗樹『人類滅亡小説』

 

——山田さんとは「嫌われ松子の一生」の編集担当としてご一緒してからのお付き合いなので、もう20年近くになります。これまでに色々とうかがってきた内容もありますが、今回はそれらも含めて色々とうかがいます。

ではまず作家を目指したきっかけを教えてください。

 

会社に入ってからなので、20代後半からです。会社のレポートで提出した文章が面白いと誉められたのをきっかけに、「ああ、そういう才能があるんだ」と思い、挑戦してみようと思ったのがきっかけですね。

 

——ではさほど小説の世界に詳しくなかったとすると、どういう方法があるのか知らなかったのでは?

 

そうですね。新人賞があるらしい、というのは知っていたんですが、どういった新人賞があるのかは分かりませんでした。そこで色々と調べたら、当時はミステリーが全盛期、そのミステリーの新人賞の中でも最高峰であり一番メジャーなのが「江戸川乱歩賞」でしたので、そこを目指そうと思いました。

なので、私自身はミステリー小説が好きでたくさん読んでいたから書きたかったわけではなく、一番盛り上がっていたジャンルがミステリーだった、ということです。

ただミステリーというジャンルに挑戦することを決めてからは、知らなければ挑戦自体が難しいので、様々な作品を読んで研究するようにしました。たとえば、年末に発表される「このミステリーがすごい!」などのランキングに入った作品はなるべく読むようにしましたね。

 

——その研究の成果として、横溝正史賞を「直線の死角」で受賞されるわけですが、どのくらい挑戦されたのですか?

 

最初に「作家になろう!」と思い立ってから5年目ですね。書いた長編小説としては2作目です。

 

——2作目で受賞というのはかなり早い気もしますが。

 

1作目は乱歩賞に出しました。結果は一次選考も通りませんでした。その結果を見て、「全然ダメだ……」と悟り、「まずは短編で修行しよう」と思ったのです。短編ならば執筆期間を長く取らなくても書けると思ったので、何本も書いて修行しようと思ったのです。そこからミステリー系の短編の新人賞に応募していた期間が3年くらいありますね。

それでも、その短編の新人賞も、最初のうちは1次選考に通りませんでした。

なぜなのか? 今から考えると、自己流で書いていて基本そのものが何も分かってなかったんです。

私自身が小説を読み込んできていなかったので、小説の作法(ルール)すら知らなかったんですね。

選考に通らないことが続くと、自己流をいったん止めて、オーソドックスなミステリーの書き方をしてみよう、ネタ自体も私が専門知識があるものを使用してみよう、と方向転換しました。

そうして書いた作品が初めて一次選考を通過したのです。その結果を見て、その方法で書くようにしました。それでも最終選考には残りませんでした。

 

——ずっと短編を書いていたのですか?

 

短編で新人賞を受賞しても、なかなかそれだけではプロとして認めてもらえない、本が刊行できない、という点に気づき、再び長編小説に挑戦したのです。

そこで書き上げたのが「直線の死角」の原型になる作品です。

当初その作品は江戸川乱歩賞に応募し、1次選考を通過しました。

1次選考とはいえ、「あのメジャーな乱歩賞で!」というのは自信になりました。

他の新人賞では1次選考も通らずにいた訳ですから。

結果、落選したとはいえ、ネタ自体は手応えがあったので、推敲し、全面的に改稿し、応募した横溝正史賞で受賞することができたのです。

 

——オーソドックスなスタイルは何から学んだんですか?

 

小説を書き始めたころに読んだ本で、「新人賞の獲り方おしえます」という本で基本的なこと——視点であったり人称の違い——などは学んでいたのですが、「それでも作家になりたい人のためのブックガイド」という本を読んで、「ああ、こうやって表現するのか」といった表現の深みのつけ方が初めて分かった気がします。

 

——横溝正史賞出身ですとミステリー作家と呼ばれ、ミステリーを書いていく方と思われますね。

 

そうですね。多くのミステリー好きは、子どもの頃から熱心に海外ミステリーを読み込む方が多いのですが、私はミステリーの熱心な読者ではありませんでした。そのため、ミステリー作家を志向していた訳ではありませんでした。

ミステリーの面白さは分かります。ただ自分がその作品を書けるのかというと、その自信はありませんでしたね。

 

——デビュー作を含め、ミステリーを3作刊行した後、「嫌われ松子の一生」を発表します。担当編集者である私はミステリー作品として売り出していきますが、実はこの作品はミステリーではないですね(苦笑)。ミステリーの構造を活用していますが……。

 

謎解きがメインではない、という点では純粋なミステリーではないですね(笑)。

ただプロットを立てた際には、ミステリー的な仕掛けを最初に考えました。

過去からの流れのパートと、現在から過去に遡っていくパートがあり、最後に2つのパートが交差した時に新しい景色が広がる、というイメージでした。

 

——この作品は最初にプロットを立てたのですか?

 

いえ、最初にイメージしたのは作品の構造です。実は構造から作品作りをスタートさせたのは、この作品だけです。
この作品を書き上げることが出来て、ジャンルにとらわれずに人間ドラマを描く、という私の作風を始められたと言えると思います。

 

——そうですね、人間ドラマを重視する山田さんの作風が始まった作品ですね。

では、これからは小説を書きたい方へのアドバイスとして、山田さんがミステリーを研究したように、「ジャンル」をしぼって書いていくべきでしょうか?

 

う〜ん、これは簡単には答がでない問題ですね。つまり、新人賞の最終選考に残ろうと思ったら……(特別公開はここまで、続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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