僕がプロットを封印して書いた7年ぶりの新作「怪物のデザイナーと少年」の制作手順 山川健一
小説中の主な登場人物は性別や年齢が異なっていても「私」が分割された存在なのである──
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「私」物語化計画 2022年6月10日
特別公開:僕がプロットを封印して書いた7年ぶりの新作「怪物のデザイナーと少年」の制作手順 山川健一
予告しておいたように、「怪物のデザイナーと少年」の構造分析をします。《「私」キャラクター化ノート》の具体的な解説をするためです。小説中の主な登場人物は性別や年齢が異なっていても「私」が分割された存在なのである──という僕の文学的な確信が前提になっている。
この短編はプロットを作らずに書いた。と言うか、コロナとウクライナ戦争と核の恐怖に脅かされる今の世界でオーソドックスな物語プロットを構築するのはきわめて難しく、「そんなものは作れっこない」という半ば自暴自棄な諦めがまずあった。
プロットがなくてもキャラクター・メイキングをしっかり行えば小説の構造は成立するはずだという、これも自分の確信を前提にとにかく書き始めた。
最初に、夜のマンションのテラスで、ミサイルが飛来する幻想を見るところまでを一気に書いた。この時点で、それ以降のことについては全く何のアイディアもなかった。
ただ主人公の職業を怪物のデザイナーという設定にしたのは、以前COVID-19をめぐる小説を書こうかなと思った時、主人公の職業をそうしようと思ったことの流用である。
COVID-19の短編はプロットを制作し結末のシーンも確定していたのだが、結局書き出すことができずに流れてしまった。怪物のデザイナーはコロナで死に、彼の友人が夜明け前の海に向かい合うところで小説は終わるはずだった。だが、1行目を書き出すことができなかったのだ。
したがって今回も、最後まで書ききることができるかどうかかなり不安であった。
夜のテラスに、バスケットボールをドリブルする小学生の翔太が登場する。これもプロット上あらかじめそうしたというわけではない。若い女がやって来てもいいわけだし、怪しい老人が登場してもいい。だが結果的に、小学5年生の少年のイメージがごく自然に浮かんできたのである。
これが、最初の「私」の分割だ──続きはオンラインサロンでご覧ください)