「私」分割式キャラクターメイキングの方法 2 あなた自身を「男」と「女」と「それ以外」の三つに分割する  山川健一

愛がなければ小説を書く意味もないのだ──

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「私」物語化計画 2022年5月13日

特別公開:「私」分割式キャラクターメイキングの方法 2 あなた自身を「男」と「女」と「それ以外」の三つに分割する 山川健一

先週は、いわば狂気の種子を「私」から分離させる方法について書いた。狂気の種子には凶暴なものもあれば、ファンタジーを思わせる優しいものもあるだろう。だがそれが「狂気」であることに変わりはないのだ。

狂気と一緒に沈んでしまわないために、イメージを使う。例えば梶井基次郎の「檸檬」のように。

このイメージが導き出されさえすれば、小説が書ける。保証します。小説というものは具体的なもので、哲学のように観念的なものではない。だからこそ、ビジュアルが思い浮かぶイメージが必要なのである。

今週はいよいよ「私」を分割する。

その前提として、あなたから狂気が分離されていなければならないわけだ。

 

【アーティストは両性具有でなければならない】

あなた自身を「男」と「女」と「それ以外」の三つに分割することによって、三種類のキャラクターを作る。

文学や芸術の根幹にはエロスがある。だから絵描きは裸婦像のスケッチをするのだし、小説家は一本の樹木を描く時にも官能を意識する。

そしてエロスとは、男と女の中間にある。

説明しよう。

ここに美しい女の脚があるとして、男がそれを見て欲望を抱く。あるいは汗をかいた男の背中を見て女が欲情する。

その時エロスはどこに存在するのだろうか。

女の脚や男の背中?

いやいや、それは脚であり背中に過ぎない。

では、欲望を抱いた主体の脳にエロスは存在するのだろうか。いや違う。脚や背中という具体物がなければ、エロスも欲望も生まれようがないのだ。

つまりエロスは「中間」に存在する。

関係性と言ってもいい。

関係性を描くためには、アーティストは両性具有でなければならない。小説家も男の性と女の性の両方を持っていなければならない。

もちろんそれは原稿を書く時だけの話で、日常生活でそうしろと言っているわけではない。

ロックンロール・バンドのヴォーカリストは、化粧したり女物の洋服をまとったりする。ヴォーカリストはバンドの中で女という「性」を体現しているわけだ。ギターのネックはペニスの象徴みたいである。

男女二つの性が合わさった瞬間、バンドにはオーバードライブがかかる。そういう構造になっている。

ミック・ジャガーは1997年に、ナチスによって迫害された同性愛者たちの悲劇を描いた『ベント/堕ちた饗宴』という映画に、ゲイのシンガーとして出演している。象徴的な話で、さすがにミックだよなと僕は思ったのだった。

第二次大戦下、ナチスドイツが支配した狂気の時代、ユダヤ人は黄色い星がつけられ迫害されたが、同性愛者達はユダヤ人よりも下等に扱われ、ピンク・トライアングルの印をつける事を強要され、収容所で虐待されたのだった。

今またロシアはナチス以上の残虐さでウクライナ人を殺しまくっているが、ロシア正教のトップであるモスクワ総主教のキリルはウクライナもロシアも「聖なるロシア」の一部であると主張し、自由主義やグローバリゼーション、LGBTを堕落であるとみなしている。

キリルはもはやプーチンの飼い犬で、「プーチン統治は神の奇跡だ」なんて言っている。

LGBTを公然と弾圧するロシア正教とプーチンこそはナチスなのであり、そんなロシアではバレエも絵画も文学も音楽も、死に絶えるだろう。大げさに言っているわけではない。LGBTを始め、あらゆる自由が保障されていない地域では芸術は著しく停滞する。

 

【初恋を思い出してほしい】

では、どのような方法で「私」を「男」と「女」と「それ以外」の三つに分割すればいいのだろうか。それに、「それ以外」って何だ?

分かりやすく手短に書く。

初恋を思い出してほしい──続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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