特別公開:小説の終わらせ方 02 作品全体の思想をさらに展開して終わらせる 山川健一

作者本人は小説は完成したと思っていても、作品全体を数行で逆照射するようなアイデアがあるはずだ──

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「私」物語化計画 2021年4月23日

特別公開:小説の終わらせ方 02 作品全体の思想をさらに展開して終わらせる 山川健一

小説と「お話」は違う。このことが身に染みて理解でき、そして苦労しているなら、あなたは一人前に近づいているということだ。

小説の難しいところは、思うに、2つあるような気がする。1つは、小説は無限に続く時間や空間のある特定の部分を切り取らなければならないということだ。

写真を撮るのによく似ている。

スマホで花を撮る場合。

クローズアップで撮ろうとしたら葉についた雨の水滴が美しいことに気づく。少し引きにすると、しかし花本体の魅力が半減しそうである。

そこでもう一度スマホを花に近づける。

シャッターを押す。

モニター画面上には、その内部に光をため込んだような葉の上の水滴は写っていない。写真を撮るのはモニター画面の外にはみ出てしまう世界にお別れを言う作業なのだ。小説もこれと同じで、主人公の生活の、あるいは行為の、全てを描く事は不可能である。

そこで写真を撮る時と同じように、「お話」ならダラダラと全てを語れば良いところを、カットして簡潔にする。そういうことが必要なのだ。

もう1つ、小説は面白くなければならない。小説は言葉がシリアルに並ぶことで成立するので、最初から順番に読んでいくしかない。文章が下手だったりストーリーがだらけていたりすると、読者はパタリと本のページを閉じてしまう。

なんとか最後まで読み切り、「へえ、こんなこともあるんだ」という感想だけで終わってしまうならそれはいい小説とは言えない。

感動するのでもギョッとするのでも、喜びに満たされるのでもいいのだが、インパクトがなければならない。

繰り返すが、小説は「1. 現実世界を効果的に切り取ること」が必要で、しかも「2. 面白くなければならない」のである。

そこで問題になるのが「結末」である。

今回勉強する「作品全体の思想をさらに展開して終わらせる」という方法を身につければ、この2つを実現させることが可能である。

話が抽象的ではわかりにくいので、日本文学と海外文学から参考例を1つずつ挙げる。

谷崎潤一郎が20代半ばで書いたごく初期の短編の『秘密』と、19世紀フランスのオノレ・ド・バルザックが1835年に発表した代表作『ゴリオ爺さん』である。2作品の構造を是非とも体得して欲しい。

ただしネタバレになるので、そこはご容赦ください。

 

【谷崎潤一郎の『秘密』の結末が凄い!】

谷崎の『秘密』は、普通の刺激に飽きてしまった男が美しく女装して町に繰り出したり、再会した昔の女の秘密の住居に目隠しをしたままで赴いたりするストーリーだ。

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