「怪物ヤケッパチ」と戦うための言葉の力 02 世界なんてむしろ丸ごと滅びればいい 山川健一
──言葉を紡ぎ続けることができるようにするためには、どうすればいいのだろうか。自分を癒すしかないのである──
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「私」物語化計画 2023年11月17日
特別公開:「怪物ヤケッパチ」と戦うための言葉の力 02 世界なんてむしろ丸ごと滅びればいい 山川健一
【子供はどうやって人生を続けるのか?】
夜である。
世界の構造が根本的に変わってしまったのを感じる。昼はなんやかやと忙しく、そんなことを考える時間もないのだが、夜になるとSNSで見たパレスチナの映像がフラッシュバックする。
この夜の向こうで、ガザの子供達や、彼らの両親が今も殺されているのだと思う。
僕は何人かのパレスチナ人のジャーナリストのInstagramやX(Twitter)をフォローしている。命懸けで貴重な情報を発信し続けてくれている彼らをリスペクトしている。毎日昼過ぎに起きてまずすることは彼らの安否を確かめることだ。
既に、何人かが死んだ。
訃報に接すると僕は呆然とし、自分の無力さを思い知らされる。ガザでは国連職員の方々も100人以上が死亡、医療関係者も多数亡くなり、10分に1人子供が死亡している。
ブラジルのルラ大統領は言っている。
「子供たちが狙い撃ちされて戦争の犠牲になっている。こんな出来事は今まで聞いたことがない。これほどの女性、子供たちが死に、これほどの子供たちが行方不明になった戦争が他にあっただろうか」
ガザ地区のジャーナリストであるガリア・ハマドは言う。
「鳥に食べられた死体を見た後、子供はどうやって人生を続けるのか?」
スペインの社会権相ヨネ・ベララ氏は、
「私たちはパレスチナにおけるイスラエル国のジェノサイドをライブで目撃している。私はその共犯者になるのはごめんだ。今日はパレスチナだが、明日は誰がそうなっても不思議はない」と記者会見で述べた。
ガザの保健省局長であるムニール・アルバーシュ博士は、野良犬がアル・シファ病院の敷地内に入り込み始め、中の死体を発見し、私たちが見ている間にそれらを食べ始めたとシファ病院内からアルジャジーラの電話取材で語った。
「私たちが生きているなら、それが尊厳のある人生になることを願っています。私たちは再び連絡を取り合うでしょう。もし私たちが死んだら、神が私たちを殉教者として受け入れ、天国で会えることを願っています」
この発言を受けて、日本人の写真家の高橋美香さんは、
「戦車に包囲され、攻撃され、銃撃され、誰にも護られないで世界中から見捨てられた病院の医師に、この言葉を言わせる世界なんて、むしろ丸ごと滅びればいい」
そして僕は、
「結局、そこに行き着きますよね…」というレスを入れた。
ネタニヤフ政権のアミハイ・エリヤフ遺産相は、5日放送の民間ラジオ番組で、パレスチナ自治区ガザへの核兵器使用も「選択肢の一つだ」と発言した。
ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「現実とかけ離れている」と即座に否定し、エリヤフ氏の閣議参加を停止したが、発言が物議を醸している。
こんな世界なんて、むしろ丸ごと滅びればいい──というのは究極の「怪物ヤケッパチ」かもしれない。
パレスチナの虐殺だけではない。このクソッタレな世界には深刻なさまざまな問題がある。
多くの人々が傷ついている。
あるいは僕らが等しくやがて死ぬということが、僕らを追いつめる。鮎川誠やパンタが亡くなり、僕自身は70歳になり、ごく自然に自分の死についてぼんやりとだが考えるようになった。彼らのように、余命宣告されてからも必死に自らの表現に向かい合えるかどうか。その自信がない。
ヤケッパチになってしまうのではないか?
そうならないで、言葉を紡ぎ続けることができるようにするためには、どうすればいいのだろうか。自分を癒すしかないのである。
先週紹介したように、Jさんが、とある集まりの研修に物語論(ナラトロジー)を取り入れたら、とても良い効果が出たのだそうだ。
研修名は「神話の法則で子育てを振り返ろう」というのだそうだ。
《テキストに自分の人生を振り返って、各ステージの出来事を記入してもらいます。
──(中略)──
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山川健一『物語を作る魔法のルール 「私」を物語化して小説を書く方法』