特別公開:レトリックを身につける7──メタ表現とアレゴリー 山川健一

この頃は「メタ」という言葉が普通には使われるようになった。「メタ」とはメタファーの略語であり、それ以上でもある。

『語源英和辞典』には“metaphor”の意味と語源がこんなふうに載っている。

metaphor
【英語】隠喩。例え。

◉ 語源解説
古代ギリシャ語 meta(間の)+phero→bher-(運ぶ)が語源。「全く異なる二つのものの間を行き来して関連付けること」がこの単語のコアの意味。transfer(移動する)と同じ語源をもつ。

次代のプロ作家を育てるオンラインサロン『「私」物語化計画』会員用Facebookグループ内の講義を、一部公開いたします。

ご興味をお持ちの方は、ぜひオンラインサロンへご参加ください

 

『「私」物語化計画』

→ 毎週配信、山川健一の講義一覧

→ 参加者募集中→ 参加申し込みフォーム

 

「私」物語化計画 2020年3月13日

特別公開:レトリックを身につける7──メタ表現とアレゴリー 山川健一

この頃は「メタ」という言葉が普通には使われるようになった。「メタ」とはメタファーの略語であり、それ以上でもある。
『語源英和辞典』には“metaphor”の意味と語源がこんなふうに載っている。

 

metaphor
【英語】隠喩。例え。

◉ 語源解説
古代ギリシャ語 meta(間の)+phero→bher-(運ぶ)が語源。「全く異なる二つのものの間を行き来して関連付けること」がこの単語のコアの意味。transfer(移動する)と同じ語源をもつ。

 

“meta”の意味は、古代ギリシャ語で「~の間」の他に「~の上に」「~の後に」という意味があると記載されている。

そのメタファーの「メタ」だけを取って、この頃メタという言葉が流通しているわけだ。

「それってメタ発言、だよね」というように。

メタフィクション、メタレベルなんて言葉もあるが、これは「~の上に」「高次の」という意味だ。

司馬遼太郎の小説に時々「以下余計なことながら」という断りが入り、作家本人が登場してたとえば坂本龍馬についての感想を述べたりする件りがある。これがメタである。つまり小説の世界の出来事を描いているのに、その一つ上のレベルの作家自身が出てくるからメタなのである。このシーンはメタレベル──一段高いレベルなのである。

メタフィクションというのは架空の出来事であるフィクションを「これはフィクションだよ」と居直る手法で、司馬遼太郎の「以下余計なことながら」もメタフィクションである。

あるいはテレビドラマの探偵物などで、いきなり探偵がカメラに向かって「テレビの前のあなたには犯人が分かりましたか?」などと語りかけるシーンもメタフィクションだ。

アニメやライトノベルでよく使われる手法で、「メタ」という言葉もこの頃はサブカルっぽい衣装を身につけた気配だ。「メタ的に時代の空気を先読みしないと」とか「『千と千尋の神隠し』のカオナシって引きこもりのメタだよね」「『鬼滅の刃』の鬼のメタってなんだと思う?」などと使う。

僕も「バルザックの自然描写はエロスのメタっぽいよね」などと言ってみようか。

いや、慣れないことをすると失敗するな。

 

SNSゲームの『Fate/Grand Order』や、このゲームを原作にしたアニメ『絶対魔獣戦線 バビロニア』に、キングゥというキャラクターが登場する。

キングゥは、古代メソポタミアの文学作品『ギルガメッシュ叙事詩』に登場する、ギルガメッシュ唯一無二の親友であるエルキドゥのコピー、まがい物、泥人形である。

本物のエルキドゥに成りすましている。

自分は大量生産品の一つに過ぎないのではないかと疑い始めたキングゥは自問する。

「命も名前もない人形…? ボクが…?」

そして戦いのさなか….(特別公開はここまで、続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

→ 毎週配信、山川健一の講義一覧

→ 参加者募集中→ 参加申し込みフォーム