プロットを巡る冒険 04 言葉には整理整頓する力がある 山川健一

──まず、自分の内面と原稿の整理整頓が必要なのだ。次にストーリーとエピソードとプロットの整理が必要だ──

 

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2025年2月14日

特別公開:プロットを巡る冒険 04 言葉には整理整頓する力がある 山川健一

【蓋なしケン】

今回は、少し小言めいたことを書かせていただく。たいしたことではないように見えながら、実は重要なことなので書いておきたい。

言語というものは、カオスに形を与える機能を持っている。つまり、このサークルの名前に即して言えば、「物語化することで無限の現実に形を与える機能」を持っているのだ。

語れば語るほど、書き記せば書き記すほど、世界の輪郭は明瞭になっていく。それが言語というものの重要な側面なのである。

ずっとプロットについて書いてきたが、プロットにしても言語なのであり、書き連ねていけばいくほど、これから書こうとする小説の輪郭は明瞭になっていくはずだ。

なんだか難解なことを書いているようだが、シンプルなことだ。もっと平易に表現すれば、「言葉には整理整頓する力がある」ということになる。

実は整理整頓ほど、僕にとって苦手な事はない。

子供の頃、歯磨きチューブの蓋を閉めない、ドリンクの蓋を閉めない、開けた引き出しを閉めない、といったルーズさを何度も母親に叱られ、とうとう彼女は僕に「蓋なしケン」というニックネームをつけた。

「また蓋なしケンが出てるわよ」と、よく叱られた。

僕のソックスはお互いに仲が悪いらしく、すぐに片方がどこかに姿を隠してしまう。片方だけのソックスが引き出しの中に山のように溜まることになる。

LPレコードやCDにしても、ケースと中身が一致しない。この頃はデータで聞くから問題ないのだが、以前は目当てのレコードやCDを探すのに一苦労したものである。

最近、断捨離をして、状況はかなり改善されたが、部屋の中が散らかっていることに変わりはない。

しかし、である。こと原稿に関しては、かなりのレベルで整理整頓されている。親しい編集者が、それを見てよく驚く──というか呆れる。

散らかり放題の部屋で暮らし、ファッションにもこだわらず、髪だってボサボサで礼儀知らずであり、さらに筆無精なくせに、なぜ原稿だけはきちんとしているのかというわけだ。

これは文章が上手だということを意味しているわけではない。原稿が整理整頓されているという意味なのだ。

短いエッセイでも短編小説でも、必ず表題をつける。そのすぐ後ろに。「山川健一」と署名する。

1行目の頭は必ず1マス空ける。

改行の時も同様である。

会話の表記には法則性がある。それを設定して守る。

同じ原稿内では、漢字の使い方も統一する。「僕」と「ぼく」が混在しないように注意するわけだ。

句読点は意識的に打つ。

人称の間違いがないように気を配る。

小説の場合は、ナレーターの存在をなるべく読者に悟られないように配慮する。読者が自然に読めるように配慮するわけだ。

もちろんこれは、司馬遼太郎の小説にしばしば「以下無用なことながら」という形で作家自身が登場する箇所があるように、例外はある。

だがいずれにせよ原稿を可能な限りきちんと整形する。文章の上手い下手ではなく、最低限のルールを守るということだ。

ここからが小言です。

物語化計画では、僕は実践コースの会員の人たちの原稿を読み、未完の作品なら方向性のアドバイスを行い、描写を加筆すべき箇所などを指摘し、不要なところは削除するよう指示する。何度か書き直しもしていただく。

基礎コースの会員の方の原稿は、そこまではできないが、作品が出来上がってメールしていただければ、それを読む。手の空いた時に感想を返信する。

合わせると一月に何枚ぐらいの原稿を読んでいることになるだろうか?

その原稿が────続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

 

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