特別公開:実践コース課題1 ジェノバの夜

次代のプロ作家を育てるオンラインサロン『「私」物語化計画』会員用Facebookグループ内の講義を、一部公開いたします。

『「私」物語化計画』の「実践コース:作家へのロードマップ」参加者には毎月課題が提示され、課題を提出することで山川健一とプロの編集者による赤字・添削を受けることができます。

初回となる今回の課題「実践コース課題1 ジェノバの夜」を全文特別公開いたします。

初回となるこの課題は特例として山川健一だけが目を通し、作家としての方向性に関してのアドバイスが返されます

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「私」物語化計画 2018年11月23日

特別公開:実践コース課題1 ジェノバの夜

「私」物語化計画の基礎コースは、大学で言えば「講義」科目であり、実践コースは「演習」科目、あるいはゼミみたいなものだ。

実践コースではぼくが月に1度課題を出し、皆さんにはそれに沿った原稿を書いてもらいます。それをぼくと文芸編集者が添削し、赤入れしてお返しします。Microsoft WORDの「変更履歴」を使い、添削箇所が赤字表示されるファイルを送ろうと思っている。

このオンラインサロンの大きな特徴は、多くの大学やカルチャーセンター等の小説講座が発語以降の指導に終始しているのに比べ、どう発語するのかということをカヴァーしている点だ。8年間の大学における小説指導で、それがいかに重要なことなのかを痛感したので、このサロンでもこのスタイルを継承しようと思っている。

つまり、小説の方法論(HOW)を伝えるだけではなく、あなたは何を(WHAT)、なぜ書くのか(WHY)を一緒に考えていこうということだ。

ポール・ヴァレリーという人がいる。フランスの詩人、小説家、評論家でもあった。フランス第三共和政を代表する知性と称された作家だ。このヴァレリーに「ジェノバの夜」というエピソードがある。基礎コースの講義で詳しく触れる予定なのでここでは簡単に紹介するが、年上の女性への恋に破れ、自らの詩人としての才能を疑い、文学そのものを嫌悪した21歳のヴァレリーは自殺しようかと悩む。

母親のファニーがトリエステ生まれのイタリア人だったので、親戚の住むジェノヴァに滞在したヴァレリーは、記録的な嵐の夜、知的クーデタを体験したと言っている。自分で自分を組み替えるような、あるいは自分で新しい自分を生み出すような一夜を体験した。そして「テスト氏」という分身を生み出すのだ。

この事件は文学史的に「ジェノバの夜」と呼ばれるようになった。

ヴァレリーを読みながら、次第にぼくは「ジェノバの夜」はじつは自分にも起こっていたのではないかと思うようになった。いや、その生命の輝きのピークとも言うべき夜はすべての人を襲い、それを体験することで人間は大人になっていくのではないかと確信するようになった。

ぼくらは等しく、過去に体験したに違いない「ジェノバの夜」に向かって成長していくのである。それを対象化し続け自分が書く小説のコアに措定することで、ぼくらは生きた小説を書くことができる。

実践コース の最初の課題は、自分にとって「ジェノバの夜」と呼べるような出来事、あるいは期間を思い出し、それを明確にするレジュメを書いてもらうことだ。

 

課題【ジェノバの夜】

あなたにとっての「ジェノバの夜」を400w×5枚~10枚で書いてください。

※この最初の課題は山川健一だけが読み、スタッフは読みませんので、山川のメルアドに送ってください。もちろんその内容を他言することはありません。原稿を推敲するのではなく、作家としての方向性に関して山川がアドバイスします。

山川健一

 

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