特別公開:ストレッチ4 妖精と二人で書く

次代のプロ作家を育てるオンラインサロン『「私」物語化計画』会員用Facebookグループ内の講義を、一部公開いたします。

今回の講義は、「ストレッチ4 妖精と二人で書く」。今回より、特別公開は冒頭の一部のみとなります。ご興味をお持ちの方は、ぜひオンラインサロンへご参加ください

『「私」物語化計画』講義内容特別公開

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「私」物語化計画 2018年12月6日

特別公開:ストレッチ4 妖精と二人で書く

小説の構造についての話は本編から始めるとして、ストレッチの4回目は、妖精と二人で書くというテーマでぼくの作家生活の一端を紹介したいと思う。

23歳でデビューしたので、もう40年以上小説家として生きてきたことになる。その間、思い切ってバットを振ったらたまたまボールが芯に当たり、10万部を超えるベストセラーになったこともあれば、2年間コツコツと書いた長編小説が5千部の初版で残部が出たこともある。

批評家や読者の方々に「傑作だ!」と誉められることもあるし、「なにこれ、駄作だ」と酷評されることもある。

その度に一喜一憂していたのでは、身が持たない。

そこでいつの頃からか、ぼくは妖精と二人で書くという習慣を身につけたのである。部屋の片隅に妖精がいるのだ。彼あるいは彼女と相談しながら小説を書く。考え事も対話形式でやる。

実践コースの人達に出した最初の課題は、ポール・ヴァレリーのジェノバの夜に関するレポートを書いてもらうことなのだが、若き日のヴァレリーは年上の人妻に失恋して自殺を決意し──詳細は省くが、嵐に見舞われたジェノバで自殺するかわりに「テスト氏」という人格を生み出した。

それと似たようなことと言うか、テスト氏のロック版が妖精だ。

小説が成功しても「俺って天才だな」とは思わない。部屋の片隅の妖精にお礼を言う。

「おまえが頑張ってくれたお陰でうまくいったよ。ありがとう」

残部の山を築いた長編小説を新聞の時評でさんざんコキ下ろされたら、妖精に苦情を言う。

「おまえが頑張らなかったからこんなことになっちまって、次はちゃんとやってくれよ。頼むぜ!」

小説だけではなく、人生のポイントで決断しなければならない時などにも、自分で判断を下さない。
「山形にある大学で教授をやれって話が来てるんだけど、どう思う? 俺はこれからバンドのリハなんで、帰るまでに考えておいてね」

ぼくはどうも悩みのない男に見えるらしく、実際のところ他の人に較べれば深刻な悩みはないほうだと思うが、それでも長い人生を過ごす間には、自分ではどうにもならないような問題を抱えることだってあった。

そんな時にも、妖精に頼む。

「自分が悪いんだってことは分かってるよ。でもどうしようもなかったんだ。どうすればいいか考えておいてくれよ」

これは仏教で言う「他力」に近いのかもしれない。

 

妖精と共に考え、共に書くという習慣を最初に身につけたのは十代の頃だ。カフェバーみたいな店によく飲みに行ったのだが、ある時に気がついたのだ。自分の中にはジョン・レノンによく似た男とミック・ジャガーによく似た男が棲んでいるなってことに。

例えば……(特別公開はここまで、続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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