ダーウィンを理解すると小説が豊かになる 05 僕らは旧人類になるのか? 山川健一
──やがて人類は、ジーンリッチとナチュラルに二分されることになる。二つの別の種は、決して交わることがない──
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2024年7月5日
特別公開:ダーウィンを理解すると小説が豊かになる 05 僕らは旧人類になるのか? 山川健一
【ダーウィンの進化論を簡単に】
子供の頃、『ビーグル号航海記』というチャールズ・ダーウィンの本を読んだ。先週書いた、タカハシさんとシートン動物記を読んだ頃の話である。
ダーウィンは若きフィッツロイ艦長率いる軍艦「ビーグル号」の2度目の航海に博物学者として参加した。1931年から1936年の5年間かけて世界一周し、南米や太平洋の島の地形・地質・気候・生物・人物などについて幅広く記述した本の子供バージョンである。
今週は、ダーウィンの進化論を簡単にまとめておこうと思う。
ダーウィンの主張で大切なのは、「突然変異」と「自然選択説」だ。
よく例にあげられるのがキリンの首である。
高いところにある葉を食べるのに有利だったから長い首を持った個体が生き残った、と説明される。ただ、一頭のキリン、つまりある個体が高い場所にある葉を食べようとして首を伸ばしていたら、首が長くなったということではない。
有性生殖の結果、様々な特徴を持った子供たちが生まれてくる。首が長い子供、走るのが早い子供、泳ぐのが上手い子供、頭の良い子供等々である。
有性生殖の利点は親のクローンではなく、配偶者との関係で様々なバリエーションを持った子供が生まれてくる点にある。
様々な災害や危険が想定され、しかし異なる能力を持った子供たちがいれば誰かが生き残るだろうという戦略である。キリンの場合、首が長い遺伝子を持つ個体同士が交尾して「首の長い」遺伝子が蓄積されていった。彼らは高い場所にある葉っぱを食べることができ、その結果生存率が上がった。
生き残った首の長い個体同士で繁殖することにより、「変異」が蓄積していったのである。こうしてキリンは首が長いという「進化」を遂げるのである。
この例からもわかるように、進化というのは一個体の中で起こる事はない。
大谷翔平は進化している──これは間違い。
人間はむしろ退化している──これも間違い。進化とは進歩とは異なり、一般的に退化と呼ばれる変異を含めた概念なのだ。
ついでに、『ポルシェ911進化論』という僕のかつての著書につけられたコピーも間違い。生命体しか進化しない。ま、これは確信犯的なネーミングです。ポルシェ同士がセックスすることはないからね──続きはオンラインサロンでご覧ください)
山川健一『物語を作る魔法のルール 「私」を物語化して小説を書く方法』