神秘体験をコアに配置した小説を書く 04 スターチャイルドに至る道 山川健一
──インナー・チャイルドと出会い、セルフ・ヒーリングへの道を探ることになった──
次代のプロ作家を育てるオンラインサロン『「私」物語化計画』会員用Facebookグループ内の講義を、一部公開いたします。
ご興味をお持ちの方は、ぜひオンラインサロンへご参加ください。
→ 毎週配信、山川健一の講義一覧
→ 参加者募集中→ 参加申し込みフォーム
「私」物語化計画 2023年12月22日
特別公開:神秘体験をコアに配置した小説を書く 04 スターチャイルドに至る道 山川健一
【スターチャイルド】
オーラ体験の話の続きである。
部屋に辿り着いた僕はいつもと変わらない風景にほっとし、だが少しばかりがっかりして目を閉じたのだ。するとその瞬間に、そんな僕を嘲笑うかのように、円錐形の宇宙が出現した。
しかも今度は、円錐形が膨脹しはじめた。つまり円錐の頂点が額の前へとせり出し、宇宙が膨脹していく感じだ。
スクリーンは後方に下がり、それがかつて円錐の形をしていたということさえわからないほどに宇宙は膨脹していった。
そしてその中心に、アグラを組んだ自分が見えた。
生命のない宇宙に、たった一人きりの自分がぽっかり浮かんでいる。僕は言いようのない孤独の感覚に襲われた。この宇宙に、生命を持って呼吸しているのは自分一人なのである。家族や友人どころか、僕以外には猫一匹存在しないのだ。それはいわば究極の孤独といったもので、僕はこれで二度と現実の世界に帰れなかったらどうしようと恐れた。
やがて、宇宙空間に浮かんだ自分が裸になり、もの凄い速度で若返っていくのだ。子供になり赤ん坊になり、あっと言う間に胎児になった。胎児になった僕が指をしゃぶりながら宇宙空間に浮かんでいる。
スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』(1968年)のエンディングに、宇宙空間に浮かぶ胎児の映像が映し出されるが、ちょうどあんな感じである。
あの胎児は、主人公のボーマンが人類を超越した存在=スター・チャイルドへと進化を遂げたことを表現しているらしいが、もちろん僕は別に星の子供に進化したわけではない。
ただ、ジャマイカのビーチで遭遇した光の球体も、オーラ体験も、どこかで密接に宇宙空間と結びついている。
あの映画に登場するモノリスという黒い板はさまざまな段階で人類に進化を促すわけだが、神秘体験と呼ばれるものは宇宙と何かしらの繋がりがあるのかもしれない。
そもそも人類は宇宙からやって来た生命体だという説があり、僕もこの頃はそうかもしれないなと思う。
『2001年宇宙の旅』原作者であるクラークはこんなふうに語っている。
「生物は水中から陸という高次元に移動したことで劇的な進化を遂げた。では我々人類も地球から宇宙という高次元に到達した時、そして再び宇宙の神秘に触れた時、更なる進化を遂げる可能性があるのではないか?」
この体験以降、ヘミシンクをやったりメディテーションしたりすると、宇宙空間に浮かぶ胎児の自分というイメージが浮かぶことがある。
カーペットの上にアグラを組んで座った現実の僕は、涙を流した。
もしかしたら、何かの理由があって、このまま死んでしまうのかもしれない。漠然とそう感じ、孤独感に押し潰されそうになって僕は涙を流したのである。
だが同時に、それは言いようもなく幸福なのだ──続きはオンラインサロンでご覧ください)
山川健一『物語を作る魔法のルール 「私」を物語化して小説を書く方法』