キャラクター・メーキングの方法 05 登場人物の職業をちゃんと描写すること(小説の作法) 山川健一

職業は登場人物たちのバックストーリーに深みと現実感をもたらすのだ──

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「私」物語化計画 2023年7月7日

特別公開:キャラクター・メーキングの方法 05 登場人物の職業をちゃんと描写すること(小説の作法) 山川健一

たった今、ピンク・フロイドの名盤『The Dark Side Of The Moon (邦題「狂気」)』の全楽曲を使用したプラネタリウム番組を、コニカミノルタプラネタリアTOKYOで観て帰宅したところだ。さすがにすごかった。『The Dark Side Of The Moon』の発表から50年を迎えることを記念して制作された話題作で、ネットニュースで見て、すぐに予約したら席が取れたのだった。

50年!

そりゃそうか。僕自身が70歳になるわけだから。

ピンク・フロイドの8作目のこのスタジオアルバムの初披露記者会見は1973年2月27日に、ロンドンのプラネタリウムで行われた。会見では楽曲のオンエアとともに、星座や宇宙のビジュアルが映し出されたという。

このアルバムは当時大きな話題となり、世界的なメガセールスを記録している。三角プリズムがモチーフのアルバムジャケットは、当時のロック業界に大きな影響を与えたアートグループ「ヒプノシス」の制作だ。

ピンク・フロイドは、今を生きるバンドでもある。

ウクライナの人々を支援するための新曲“Hey Hey Rise Up”が緊急配信リリース、ミュージック・ビデオが公開されたのは去年のことだ。

ウクライナのバンドBOOMBOXのヴォーカリスト、Andriy Khlyvnyukがキーウのソフィア広場で歌う映像をInstagramに投稿した。それを見たピンク・フロイドが、彼の歌をフューチャーするレコーディングを行ったのだ。収益はウクライナ人道支援募金へ寄付された。

この歌は、第1次世界大戦中に書かれたウクライナのフォーク・プロテスト・ソングであり、同国が侵攻されてから、世界各地で歌われてきた。“Hey Hey Rise Up”というピンク・フロイド版のタイトルは、同曲の歌詞の最後に登場する「さあ、立ち上がろう、勝利の喜びを(HEY HEY RISE UP and rejoice)」という一節からきている。

ピンク・フロイドのギタリストであるデビッド・ギルモアにはウクライナ人の義理の娘と孫がいる。ギルモアは「世界の超大国のひとつが平和な民主主義の独立国家を侵攻しその人民を殺しているという卑劣な行為に、僕たちもたくさんの人々と同じように憤りと苛立ちを感じてきた」と言っている。

ギルモアがBOOMBOXを知ったのは、2015年だそうだ。ヴォーカリストのAndriyが最近、BOOMBOXのアメリカ・ツアーを離れてウクライナに帰国し、領土防衛隊に参加した。そのあとInstagramに動画を投稿し、ギルモアがそれを見たわけだ。

「彼がキーウの、美しい金色のドーム屋根のある教会のある広場に立っている。そして、戦争のせいで交通や喧騒のまったくない静かな街の中で歌っているんだ。とても力強い瞬間だった。それを音楽にしたいと思ったんだ」

Andriyは迎撃砲の榴散弾の負傷からキーウの病院に運び込まれ、ギルモアはベッドの上のAndriyに、電話越しに曲を少し聴かせたのだそうだ。

ご存知のように『The Dark Side Of The Moon』には狂人が登場する。しかしいま狂っているのはプーチンの方だ。ピンク・フロイドは「正義」を歌う。

 

【誰かを最も簡単に理解する方法は?】

さて、講義を始めよう。先週の続きだ。

小説執筆におけるキャラクター・メーキングにとってとても手軽で、しかし重要なのは「職業」を書き込むことである。キャラクター・メーキングにおいてキャラクターの職業は、その人物の性格、興味、能力、社会的地位などを示す重要な要素となる。

自分を主人公のモデルにする場合、「俺の仕事なんて平凡で面白くないものな」などと考えてはいけない。自分にとっては平凡でも、読者にとっては案外面白いものである──続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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