特別公開:キャラクターメイキング編 人気アニメ『Dr. STONE』の助言者達1 山川健一

新人賞で作家デビューを果たした卒業生達を見ても、特徴は2つある──

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「私」物語化計画 2020年9月4日

特別公開:キャラクターメイキング編 人気アニメ『Dr. STONE』の助言者達1 山川健一

キャラクターメイキングの話の続きであるが、その前に少し。

 

【デビューするためには】

東北芸工大のゼミの卒業生、青木夕海が、「e-Story大賞」の大賞に選ばれた。「冥婚前夜」という小説だ。電子書籍「少年ジャンプ+」でコミカライズされるとのことだが、現在、サイトにあらすじが紹介されている。

 

「冥婚前夜」
P.N. 青木夕海

<あらすじ>

女子高生の春子は、SNSで自撮り写真をあげるのにはまっていた。

ある晩、不審なDMが送られてきてから、彼女の身の回りで心霊現象が起こり始める。クラスで疎まれている木原郁江がその手の事件を解決してくれるという噂を聞きつけ、ともに究明するが──ことの正体は、何者かが春子の自撮り写真を用いて、ひそかに死後結婚を行っているということだった。

現代でも死後結婚を行っている住職のもとをたずね、遺族を説得にいくが、直接春子の命が狙われてしまう……。「冥婚」にまつわる怪異を、止められるのか──。

e-Story大賞2020 – peep × TanZak
https://peep.jp/events/e-story_taskey_shueisha_award

 

日本でも青森県と山形県には冥婚の習俗があったそうで、芸工大の教員をやっていた頃、ムカサリ絵馬を見たことがある。

青木夕海は学生時代、他の学生達と一緒に僕の研究室に入り浸っていたのだが、純文学に寄った作品を書いていた。それが、卒業制作で辿り着いたのがポストモダンである。時制が非常に曖昧だった。あるシーンが現在なのか過去なのかを意図的に曖昧にしている作品だった。

ま、ポストモダンの典型的な方法論だ。

その方向性に僕は反対していて、もっとわかりやすくエッジの立った小説を書くようにと何度もアドバイスしたものだった。だが彼女は頑固で、なかなか言うことを聞かない。『文学メルマ新人賞』を受賞した丸山千耀が素直なのとは対照的である。

もっとも、丸山千耀も素直なのは文学的な領域に限ってであり、それ以外は頑固である。

千耀、読んでる? ごめんな、でも本当のことだもんな! 長編の原稿、もうちょっと待っててね。

いちばん頑固なのはロック系男子で、手を替え品を替え様々なアドバイスをしても馬耳東風で、「ボリス・ヴィアンみたいなのを書く」「アラン・シリトーが好きだ」などと志だけは高いのだが、卒業後はほぼ全員が書くのをやめてしまったようだ。さらに彼らは卒業時に研究室にあったヴィアンやシリトーを持ち去り──ま、それはいい。
『「私」物語化計画』にも様々な方が在籍しているが、案外と頑固な人が多く、これは損をするんだけどなと僕は内心思っている。

僕は年長者であり、小説というものに皆さんの100倍の時間は費やして来たわけで、そういう男のアドバイスはなるべく聞いた方がいいと思いますよ。「芸工大のボリス・ヴィアン」にならないために。

青木夕海の「冥婚前夜」 はホラー青春物で、僕はまだこの小説を読んでいないが、死後結婚をホラーの枠組みの中で書いたもののようだ。

きっと、彼女は何かを割り切ることに成功したのだろう。だからデビュー出来た。

もうひとつ特徴的なのは、窓口がデジタルだということだ。簡単に言えばe-Storyというのは所謂チャットノベルと呼ばれているものだ。「peep」というe-Story専門のサイトを立ち上げたtaskey株式会社が集英社が運営する「TanZak」というサイトとコラボして立ち上げた賞が「e-Story大賞」である。

 

文芸学科の卒業生でライトノベル作家になった猿渡かざみは2018年に『若返りの大賢者、大学生になる』(角川スニーカー文庫)でデビューして、既に10冊ほどの文庫本を出しているが、最初は「小説家になろう」というサイトに作品を発表し続け、順位を上げていった。毎日のように教室の片隅でノートパソコンに、流行作家並みのペースで作品を書いていた。

 

ゼミ生の岩渕円花は純文学系で、卒業制作ではグランプリもとったのだか、在学中に『イマドキ古事記 スサノオはヤンキー、アマテラスは引きこもり』(幻冬舎/藝術学舎出版) https://amzn.to/2GxfCKx を刊行した。

 

これは『古事記』をラノベで書くという大胆な企画で、企画自体を本人が考えた。

キャラクターメイキングが非常に特徴的で、「マザコンヤンキーなスサノオ 」「ヤンデレなスセリヒメ 」「パシリだったオオクニヌシ 」「シスコンなオモヒノカネ」という具合に描かれている。

どこからか叱られるとまずいので「神様のイメージを損ねる恐れがあります、ご注意ください」という但し書きを入れておいた。 ちなみに、おかげさまで売れ行きも好調だった。

岩渕円花は今、COVID-19以降の世界を描く『「私」物語化計画』の企画《新しいスタンダード》シリーズのための小説を書いてくれている──はず。

 

さて、他の何人かのデビューを果たした卒業生達を見ても、特徴は2つある。

  • 分かりやすいキャッチーなストーリー展開。
  • 電子書籍にまで視野を広げる。

推薦作に『銀河模様の磨り硝子』を掲載した菊地ひなたは青木夕海や猿渡かざみや岩渕円花の後輩なのだが、先輩達の戦略を参考にして欲しい。

そして、「分かりやすいキャッチーなストーリー展開」を実現するには、キャラクターメイキングが最も有効である。

帯広市の『市民文藝』の市民文芸準賞をとった平野ちかとは青木夕海と同学年のゼミ生だが、その作品「目玉焼きにケチャップ 石にはバター醤油」は、なんと石を食べる主人公のストーリーである。

デビュー作はそれぐらい弾けていないといけないということだ。

 

【弾けた奇想天外なストーリー】

『「私」物語化計画』では、僕は皆さんの立ち位置を考えながらアドバイスしている。助詞の選択間違いがまだ治らない人に「エッジが立ったキャラを作れ」と言うのは無謀で、しかし助詞がデタラメでも秀逸なレトリックを身に付けていったりするから、小説というものはわからない。

まさに総合芸術である。

しかし一般的に言って、派手なタイトル、アップダウンがきちんとあるストーリー展開でないと、新人賞をパスするのは難しい──続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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