特別公開:キャラクターメイキング編 人気アニメ『Dr. STONE』を解剖する 山川健一

どうしたら魅力的な助言者達を作ることが出来るのか?
先に結論を書く。
マイナスの発想で作れば良いのである──

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「私」物語化計画 2020年8月28日

特別公開:キャラクターメイキング編 人気アニメ『Dr. STONE』を解剖する 山川健一

キャラクターメイキングの話の続きである。

主要登場人物3人を「若き日をたぐる」モダニズム的な方法であなたは作った。
「行為者」「認識者」「敵対者」である。

主人公は「認識者」である場合が圧倒的に多い。シンプルに、その方が小説を書きやすいからである。多くの小説の主人公は受け身で、むしろバディの方が「行為者」であり読者の共感を得やすい場合が多い。大江健三郎の『日常生活の冒険』をその典型的な例として挙げておいた。

そして「敵対者」はどんなに強力でも外側にいる存在ではなく、主人公のシャドウにしなければならない。

以上、復習ですが、大丈夫ですね?

 

次に、この3人に絡むキャラを考える。

こうした人物達を「助言者」と総称することにする。どうしたら魅力的な助言者達を作ることが出来るのか?

先に結論を書く。

マイナスの発想で作れば良いのである。

男であり、50代の法律家だ。妻と2人の子供があり、検事として質素な生活を送っていたが、思うところがあり今は弁護士事務所を開業している。趣味は歴史を調べることで、歴史小説もよく読む──という具合に頭の中で外面的なキャラクターを作るのは「足し算」だ。

ファクトを積み上げていくわけだ。

そうではなく、内面的な「引き算」でキャラクターメイキングする。言葉を変えれば、欠陥を抱えた人間を作る。何かが足りない。その足りなさ加減に、彼あるいは彼女の魅力が現れるはずだ。

若い頃、何か決定的な失敗をしたことがあり、それが原因でとりわけ女性を信用していない。自信のなさを隠すために時折モラハラ的な態度をとることがある──とか。

何だか知らないが深い悲しみと孤独を抱えており、それを癒すことなどできないと感じているが友達には知られたくないので明るく振る舞っている女子中学生──とか。

これを具体的な「物」や「容姿」や「習慣」で表現出来れば申し分ない。『スヌーピー』に登場するライナスの毛布とか、『鬼滅の刃』の禰󠄀豆子がくわえている竹の筒とかである。

あるいは『ドラえもん』ののび太にとってのドラえもん、子供の指しゃぶりなども有効な引き算の表現だろう。

幼児が指しゃぶりするのは当然だが、19歳の女性が実は指しゃぶりしていたということになれば、衝撃的なキャラクターメーキングを達成することが出来るのではないか。

またのび太にとってのドラえもんは、彼の弱さの象徴である。

「引き算」については後でもっと詳しく述べるが、最初に注意して欲しいのは2つ。

1つは、「助言者」は必ずしもあなた自身を分割して創造するキャラでなくてもいいという事。自由に、遊び心満載で作っても大丈夫だ。

もう1つは、助言者の外見や言葉遣いは可能な限り特徴的なものにする必要があるということだ。

 

【『Dr. STONE』の構造分析】

ではここで、先週予告しておいたように、漫画・アニメの『Dr. STONE』(ドクターストーン)の構造分析をすることの中から、キャラクターメイキングの方法について考えてみる。

原作が稲垣理一郎、作画がBoichiで、『週刊少年ジャンプ』(集英社)2017年14号からスタートし今も連載中の作品だ。

僕は単行本とアニメで見たのだが、抜群に面白い。

プロローグのあらすじをウィキペディアから引用する。

高校生の大木大樹は、以前より想いを馳せていた小川杠に自分の気持ちを告白しようとしていた。その宣言を聞いた幼馴染の石神千空から心の籠っていない激励を受け、大樹は杠を学校のクスノキの木の前に呼び出して告白に臨む。ところがその刹那、突如空が眩く発光し、地球上の全人類が一斉に石化するという怪現象に襲われてしまう。

五感を失い身動きが取れない大樹は、「杠への想い」だけを糧に長い年月を耐え続けた末に石化から復活するが、目前には樹木が生い茂り、風化した景色が広がっていた。大樹は一足先に石化が解けて目覚めていた千空と再会を果たし、彼からこの世界が自分達の時代からおよそ3700年経過しているという現状、そして人類が消えて滅んだ世界で自力で文明を再建させるという決意を聞かされる。自分達の石化が解けた原因が「石の腐食」であると考え、約半年に渡る実験を経て石化を解く「ナイタール」を完成させる。早速、完成品を杠に使用しようとしていた矢先、野生のライオンの群れと遭遇してしまった二人は、逃走する途中“霊長類最強の高校生”と詠われていた獅子王司を復活させ危機を脱する。しかし、司は自身の思想に合わない人間を容赦なく排除する危険人物だった。司の本性を知った二人は杠を復活させ、司を倒すために一時的な逃走を図る。

司に対抗できる力を得るため、一同は千空の提案で火薬の原料である「硫黄」確保に箱根へと向かうが、その動向を推察した司もまた箱根へと追跡に向かう。箱根についた三人は遠くに上がる狼煙を見て自分達以外にも生きている人間の存在を知るが、司に杠を人質に取られ、やむなく復活液のレシピを司に教える。

「科学文明の破棄」を目論む司は千空に科学文明を発展させないと約束を求めるが、純然たる科学の徒である千空は、最期まで彼の脅迫を頑なに断り続け、遂に頸椎を折られて殺害されてしまう。大樹は友の死を嘆き、その遺体を抱えて杠と共に司から離れるが、千空の人格を知る大樹はそれゆえに「杠を庇って千空が死んだ」事実に疑問を抱く。実は千空の首筋には石化が残っており、石化解除に伴う修復効果での蘇生に賭けたのだ。その意図に気付いた大樹と杠は残された復活液をもって千空の蘇生を試みるのであった。

Dr.STONE – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/Dr.STONE

 

物語の構造分析は、まずその世界、あるいはキャラクターの前提となる「欠落」「欠如」とは何かを考えてみることだ。

この作品の冒頭の「欠落」は、石化によって日常生活の全てが失われてしまうことである。かつての世界の全体が失われているわけで、スケールが大きい。

読者は最初、主人公は純朴な大木大樹だと思うのだが、実は強い意志で科学を発展させようとする石神千空の方が主人公である。

特徴的なのは、石神千空は──続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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