特別公開:雨の日にコーヒーを飲みながら 山川健一
いかに書くか(HOW)より、何を書くか(WHAT)が、もっと言うならなぜ書くのか(WHY)について考える方が遥かに大切で有効だということだ──
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「私」物語化計画 2020年7月24日
特別公開:雨の日にコーヒーを飲みながら 山川健一
連休中なので、今週は講義はお休みにして、今後のロードマップについてエッセイ風に書きたいと思う。
小池都知事は4連休について「外出はできるだけ控えろ」と言っているので、僕も渋谷の仕事場でコーヒーを飲んだり、ゲームをやったり、宮下恵茉さんの『たまごの魔法屋トワ』(文響社)を読んだりしている。これはシリーズの2話で、1話がとても面白かったので、展開が楽しみだ。しかし、これはもちろん褒め言葉なのだが、宮下恵茉さんってまだ子供なんだなと思う。そうでないとこれは書けないだろう。
【推薦作について】
推薦作のコーナーに実践コースのIさんの『礼華さんが告白してくれない』を掲載し、何人かの方にコメントもいただいた。ありがとうございます。やはり、『「私」物語化計画』のグループに小説がアップされると盛り上がる。何よりも、Iさん、有り難うございました。
ちなみに本作はCOVID-19以降の世界を描く企画ではなく、通常の推薦作だ。
《新しいスタンダード》シリーズとしては、今後、Iさんの『遠い森の声』、Kさんの『銀河模様の磨り硝子』を掲載する予定だ。
『「私」物語化計画』ロック班(?)から原稿が届かず、それが少し残念だ。M、Kの2人は必ず短編を送ること。OK?
10作くらい集まらないと電子書籍化は無理なので。
【キャラクター・メイキング】
来週から、キャラクター・メイキングについて講義します。書店に並んでいる「小説の書き方」みたいな本ではキャラクター・メイキングは主流だろうと思う。しかし、『「私」物語化計画』では、これまでキャラクター・メイキングについてはほとんど触れていない。
いわば禁断の領域だった。
もちろんこれには明確な理由がある。
どんなカテゴリーの小説も、コアにあるのは「私」でなければならないと僕は考えている。そうでなければ面白くないし、そもそも小説を書く意味なんてない。
それが僕の文学観というか、世界観だ。
反対に言えば、コアで「私」が呼吸していさえすれば、どんなカテゴリーの小説でもいいし、かなりアバンギャルドなものでもいいし、もっと言えば小説でなくたって良いと僕は考えている。
楽屋話になりそうだが、僕は毎週そういうふうに思いながらこの講義テキストを書いている。会員の皆さんに約束した《新しいスタンダード》シリーズのための小説は必ず書くつもりだし、それ以外の小説も書くつもりだが、僕にとってこの講義テキストを書くことと小説を書くことにたいした差異はないのだ。
こうした僕の哲学をベースに『「私」物語化計画』は生まれた。
これまで講義は、実はこんな順番で展開してきた。もちろんネット配信なので時事的な事柄にも触れて本道から外れることも多かったが、概ねこんな順番で展開してきたはずだ。
- 何よりも大切なのは「私」を理解すること。
- そのためには実は論理的な「私」の構造を分析することが大切だ。そうでないと迷子になってしまう。
- 「私」の構造を分析するとは、とりもなおさず自分を物語化しなければならないということだ。
- 物語の構造分析はナラトロジーの研究でかなり分析が進んでおり、これを学ぶことが近道だ。つまり物語論を「私」の構造分析に応用する。
- その上で日本語で小説を書くためには、日本語について深く学びその歴史的な美学と技術を習得しなければならない。
- そもそも言語とは何か? 「私」も「世界」も「愛」も「快楽」も言語によって成立している。
『「私」物語化計画』のこれまでの講義はこうした意図に沿って行われて来たはずで、これは「キャラクターを作れば小説は書ける」という考え方とはかなり違う。
いかに書くか(HOW)より、何を書くか(WHAT)が、もっと言うならなぜ書くのか(WHY)について考える方が遥かに大切で有効だということだ──続きはオンラインサロンでご覧ください)