特別公開:自伝の書き方を教えます5 山川健一

応用編ということで、「自伝」を長編化する方法について考えてみたい。あるいはこれを膨らませ、自分の体験をベースに長編小説を書く方法について考えてみる──

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「私」物語化計画 2020年7月17日

特別公開:自伝の書き方を教えます5 山川健一

今回は自伝の話の最終回だ。

応用編ということで、「自伝」を長編化する方法について考えてみたい。あるいはこれを膨らませ、自分の体験をベースに長編小説を書く方法について考えてみる。

先週、課題として、3つの項目を記入しなければならない「自分探しの旅シート」を出しておいたが、どうですか?

実はあの課題は、以前に行ったスクーリングの際にも似たようなシートを配布し、その後ビールを飲みながら個人面談と言うとオーバーだが、軽いアドバイスをさせていただいたことがある。今はそういうイベントがやりにくいので、講義の方で触れることにしたのだ。

シートには3つの質問事項が設定されていた。リマインドしておきます。

1. コンセプトを設計しハイ・コンセプトを探す。
2. 「私」を分割し、バック・ストーリー、内面の悪魔について考える。
3. 分割した「私」を繋ぐイノベーションとは何か? 可能なら具体的に。

実はこれには続きがある。

その続きの質問に答えると、自伝、あるいは長編小説のストーリーが完成する仕組みになっている。

これは課題にはしないので、安心して続きを読んでみて欲しい。

4. 複数のプロットポイント設定する。
5. プロットポイントにおけるメンター。
6. アーク(力と洞察を探す)
7. 自分は今「旅」のどの辺りにいるのか? そして「1」のハイ・コンセプトに戻る。

これだけでは意味不明だろうと思うので、今回もそれぞれの項目を解説する。

 

【複数のプロットポイント】

プロットポイントとはシナリオの世界で使われる用語である。シナリオ(脚本)と小説は似ているようで方向性が全く逆だ。

小説はイマジネーションを膨らませる方向で完成していき、反対にシナリオは世界を縮小していく方向で完成を目指す。

シナリオは基本的に会話だけで成立し、描写が含まれない。1つの描写がストーリーの展開にドラスティックな影響を与えながらストーリーが膨らんでいく小説とは、そこが違う。

小説は主人公の意識の流れをたどりながらストーリーを膨らませていくのに比べ、シナリオはむしろ意図的に意識の流れを断ち切り、世界を明確にブロックに分けて構成するのである。

しかし正反対のベクトルを持つシナリオの方法論が、小説について考える場合に役に立つことが多々ある。

 

映画の脚本のブロックは3つである場合が多い。これを三幕構成(Three-act structure)と言う。3つのブロックは以下の通りだ。

1. 設定(Set-up)
2. 対立(Confrontation)
3. 解決(Resolution)

 

この3つのブロックの比は1:2:1だ。

それぞれのブロック(幕)をつないでいるのがプロットポイントである。プロットポイントとは主人公に行動を起こさせる出来事のことだ。

三幕の芝居ならば、印象的な冒頭のエピソードを含めるならば、3つのプロットポイントが必要なことになる。

 

シド・フィールドという人がいる。ジャン・ルノワール、サム・ペキンパーらに師事したハリウッドの脚本家でありプロデューサーだ。そのシドは『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』(フィルムアート社、2009)の中で「第一幕の終わりと第二幕の終わりには、ターニングポイント(プロットポイント)がある」と言っている。

つまり、この考え方だとプロットポイントは2つ必要だということになる。

ま、大した違いはないが、「欠落」から始まる物語にとって冒頭のプロットポイントは重要だと僕は考えている。

ハリウッドの映画は巨額な制作費を必要とし、だから脚本もきっちり3部構成で作るのだろう。自伝にしても小説にしても言語を積み上げていく表現なので、映画のようにスパッと割り切れないことが多いだろう。しかしそれでも、構成をきちんと整理する必要はある。

 

僕らの人生は、普通、ダラダラと続いていく。

たとえば恋愛にしても──続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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