特別公開:基礎的な文法の話──主語と述語は愛し合っている 山川健一

助詞の問題と「接着剤のような言葉」の問題、その次に多くの作家志望の方がつまずくのは、主語と述語の問題だ。

主語と述語は深く愛し合っている関係なのに、これを無慈悲にも引き離しているケースが多々ある。主語が行方不明になっている述語を探し求めて孤独に陥っているパターンも多い。

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「私」物語化計画 2019年12月13日

特別公開:基礎的な文法の話──主語と述語は愛し合っている 山川健一

品詞の話というか「助詞音痴」「接続詞音痴」の話の続きである。

日本語文法の基礎を復習しているわけだが、普段使いなれている母語だからこそ難しい。

文法と言われると身構えてしまいがちだが、文法とは文章を書く時のルール、決まりのことだ。言葉というのは誰かと意思疎通を図る道具なのだから、全くオリジナルな言語というものは存在しない。相手も知っている言葉を、相手が理解できる構造上のルールを守って提示しなければならないのだ。

 

助詞の問題と「接着剤のような言葉」の問題、その次に多くの作家志望の方がつまずくのは、主語と述語の問題だ。

主語と述語は深く愛し合っている関係なのに、これを無慈悲にも引き離しているケースが多々ある。主語が行方不明になっている述語を探し求めて孤独に陥っているパターンも多い。「助詞音痴」や「接続詞音痴」など話し言葉の場合はほとんど見受けられないのに、主語と述語を切り離してしまうパターンは、政治家のスピーチなどでもとても多いのだ。これは非常に聞き苦しい。

 

例えば結婚式のスピーチで、こういうパターンがよく見受けられる。

《私は若いお2人が、晴れた日はもちろん、しかし人生は良い時ばかりではありませんので、困難にぶつかることもある。そんな時でも力を合わせて頑張って欲しい》

スピーチなのでこの話者は迷わず「私は」と言う主語で始め、しかし結局主語と述語が不明瞭のままスピーチが終わっている。結末を「頑張って欲しいと思います」にすれば「私は」という主語を「思います」という述語が受けて正しい文法が守られるのだが残念だ。

 

なぜ日本語においてそういうことが起こるのだろうか? それを考えるために、まず言葉の単位について整理しておこう。

 

【言葉の単位】

日本語の文章は、いくつかの単位に区切ることができる。長い文章のままでは主語と述語がどこで分断されているのかわかりにくいので、文章を単位に分解してみることが必要だ。

小さな方から、言葉の単位を並べてみる。

 

単語──言葉の最小単位。
文節──意味をこわさずに文を区切ったもの。
文 ──まとまった1つの意味があり、句点(。)で終わるもの。
段落──文章をいくつかのまとまりに分けたもの。
文章──いくつもの文が集まっているもの。

 

ちなみに句読点とは、「。」が句点(くてん)、「、」が読点(とうてん)、2つあわせて句読点(くとうてん)と言う。

 

【文節の分け方】

言葉の単位の中で間違いやすく厄介なのが文節だ。

言葉を細かく区切った際に不自然にならない最小の単位(単語とは異なる)を文節という。音声言語的にも句切ることなく、ひと連なりで発音される単位だ。

文節とは、つまり意味をこわさずに文を区切ったものであり、文節に区切るときにはルールがある。それは、1文節の中には1自立語のみというルールだ。

自立語とは、名詞、動詞、形容詞、形容動詞、副詞、連体詞、感動詞、接続詞の8つだ。つまり助詞、助動詞以外は全て「自立語」ということになる。

例文をあげるが、僕は作家のくせに例文を作るのが非常に苦手である──ということをお断りしておきます。例文というのは内面的な必然性がないので、書きにくいのかもしれない。

 

・雨が降り続いた日、彼女はカフェで占い師に会い運勢を見てもらい、結婚を決めた。

この例文を文節に分けるとこうなる。

・雨が/降り続いた/日、/彼女は/カフェで/占い師に/会い/運勢を/見て/もらい、/結婚を/決めた。

 

文節の分け方だが、「2つ以上の語が結び付いて一つになった語(=複合語)」は文節に分けず、前の文節に「意味を添える語(=補助語)」場合は文節に分ける。

 

〈降り続いた〉は〈降る〉と〈続く〉の複合語だから文節に分けない。占い師に〈見てもらう〉は、補助語(見て+もらう)なので文節に分ける。

 

文節は1つの自立語と不定数の付属語(ない場合もある)で出来ている。付属語とは、それだけでは意味をなさない単語のことで、具体的には助詞と助動詞のことだ。自立語は単体で意味がある単語で、付属語以外の全てが該当する。

 

「走っている」の「いる」は補助動詞で、動詞の仲間の自立語であり、したがって「走って」「いる」の2文節だ。

雨がやみ「晴れ上がりました」は、「晴れ上がり」が複合動詞、「ました」は丁寧の助動詞「まし」と、過去・完了の助動詞「た」なので、「晴れ上がりました」で1文節だ。

 

──という話は覚えなくてもいいです。そういや中学で習ったよな程度でOK。

 

迷った時は「ね」を入れると分かりやすい。例文の「/」の部分に「ね」を入れるのだ。

たとえば「細かい雨」は1分節か2分節か?

「細かい(ね)雨が(ね)」──2文節だとすぐ分かる。
「ね」を入れて不自然にならない位置が文節の区切り目なのである

ここまでは重要な話ではない。忘れていただいて一向に構わない。大切なのは次だ。

 

【文節の種類】

言葉の単位の1つである文節の働きについて考える。文節の働きには…..,(特別公開はここまで、続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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