特別公開:小説と僕らの人生のプロット 2 「モラハラ男との恋愛」 山川健一

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『今週もプロットについて書きたいと思います。最終的に小説作品においても、僕らの人生にとっても、「世界観がプロットに含まれる」というところに辿り着きたいのだが、うまくいくかどうか。』

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「私」物語化計画 2019年3月15日

特別公開:小説と僕らの人生のプロット 2 「モラハラ男との恋愛」 山川健一

今週もプロットについて書きたいと思います。

最終的に小説作品においても、僕らの人生にとっても、「世界観がプロットに含まれる」というところに辿り着きたいのだが、うまくいくかどうか。

プロットとストーリーの違いについては、イギリスの作家エドワード・モーガン・フォースターが1927年に発表した『小説の諸相』での解説が有名だろう。
この本は、1927年にケンブリッジ大学でフォースターが行なった講義をまとめた小説論集で、古典作品を例に取り、ストーリー、登場人物、プロット、幻想、予言、パターン、リズムという小説における七つの普遍的な「諸相」を分析している。
機会があったら紹介しますが、今回は先を急ぐので、先行するそういう本があると言う事だけお伝えしておきます。学術論文みたいに書くのは僕らしくないしね。

もっと古くは、4世紀の古代ギリシアのあの有名な哲学者アリストテレスが『詩学』の中で既にプロットについて述べている。「始め・中・終り」の三つに区分するのが基本的なプロットだと言っている。

こうした先行者の言説を──ダメだ、言説なんて硬すぎるよね? 大学教授はもう辞めたのだからもっとフランクに行かないと!

最低限の確認だけして、今週は脱線してしまおう。そして脱線こそが重要なのだということを再確認しよう。

まずリマインドです。

「エピソード」→物語の中で起きている事。お話。
「ストーリー」→エピソードを時間軸に沿って並べたもの。
「プロット」→エピソードを因果関係をベースに再構成したもの。

小説を書く場合、多くの人がまずエピソードを思いつく。もちろん僕もそうです。これをつなげて、ストーリー化しようとする。するとプロットが置き去りになってしまい、リアリティーが失われる。こういうパターンが非常に多いのです。

僕らの実際の人生についても同じことが言えるよな、とある時僕は気がつき、それが『「私」物語化計画』を始めるきっかけにもなった。

プロットについて考えるのは、技術と言うよりはむしろ姿勢の問題なので、簡単な具体例に沿って説明しようと思う。

ここに30代の女性がいるとしよう。この女性のプロットを考えることにする。
彼女は20代で結婚し、子供が1人おり、しかし夫の男性のモラルハラスメントに耐えきれず、離婚した。
その後、別の男性と出会い、数年にわたる恋愛関係の末、再婚した。
しかし気がつくとこの男性にもモラハラ的な言動が目立つようになり、別れることを決意した。今は小学生の子供を育てながらシングルマザーとして仕事をしている。

よくある話である。

ただしこれはまだ、エピソードを集めたストーリーだ。ここから、それが小説作品であろうと、実際の自分の人生であろうと、プロットを抽出しなければならないのだ。
ここで問題になるのは、この女性が、なぜ二度にわたりモラハラ男に惹かれたのかと言うことだろう。ついてなかったとか、相手が悪かったとかで片付けてしまうと、エピソードはストーリーを織り成すだけでプロットを取り出せないのだ。

最初は優しく、強く見えた男。
しかし彼は独占欲が人並み以上で、恋愛関係が進行するにつれて彼女を拘束するようになる。自分は強い人間だと彼女に思わせ、「僕が君を守ってあげるから」という姿勢で彼女を自分のコントロール下に置こうとする。
初婚時も再婚時も同じタイプの男性だったのだ。

彼女はなぜ二度までも、そんな男に恋愛感情を持ってしまったのだろうか。それは実は彼女自身の内側に理由がある。

ここでナラトロジーを想起しなければならない。つまり……(特別公開はここまで、続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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