特別公開:課題図書、太宰治「メリイクリスマス」の構造分析

次代のプロ作家を育てるオンラインサロン『「私」物語化計画』会員用Facebookグループ内の講義を、一部公開いたします。

ストレッチ1〜5に続き、山川健一から出された課題は「コーヒーブレイク:1. 課題小説を読もう」。今週は山川健一による構造分析を冒頭のみ掲載いたします。ご興味をお持ちの方は、ぜひオンラインサロンへご参加ください

『「私」物語化計画』講義内容特別公開

 

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「私」物語化計画 2018年12月28日

特別公開:課題図書、太宰治「メリイクリスマス」の構造分析

ぼくらは言葉を話す生き物だ。あるいは、もっと踏み込んで言えば言葉によって成り立っている生き物である。しかしその言葉というものは、すべて誰かから教えられたものだ。ぼくらを構成する言語で、オリジナルなものは一つもない。

幼児の頃、「ママ」「パパ」「まんま」「ねんね」「おしっこ」といった言葉をぼくらは母親や父親から習う。

これを母語という。

小学校に上がる頃から、もう少しオフィシャルな言葉を身につける。

「1年2組の山川健一です。サッカーが好きです」というような言語だ。

これを父語という。

大人になってからも、多くの場合、ぼくらは父語を使い続ける。

「御社に最適なソリューションを提供するよう、今日は最善のプレゼンテーションが出来るよう準備してまいりました」

ビジネス・カンファレンスなんてものに出て、流暢に喋る。

「何をすべきかではなく、どうあるべきかが大切なのです。ドゥーイングからビーイングへ発想を転換することが求められています。さらに討論、すなわちディベートではなく、対話、すなわちダイアローグする組織こそが伸びるのです」

なんて具合に。

しかし、こうした母語と父語でぼくらは「私」について考えることは到底できない。小説を書くこともできない。では、どんな言葉を使えばいいのだろうか? ぼくはそれを「表現の言語」と呼んでいる。

表現の言語は、どこで探せばいいのだろうか?

そいつは、過去の作家達が書いた文学作品の中にあるのだ。

過去の文学書を読み、母語や父語を習ったのと同じように自らの中に表現の言語を吸収し、「私」を構成していくこと。小説を書くということは、それが前提となる。

つまり、未来は過去の中にあるということだ。

あなたが描くあなた自身、あなたがこれから書く新しい小説は過去の文学作品の中に眠っているのだ。

だから、読書しなければならない。

しかも、漫然と読むのではなく、攻めの読書をしなければならない。

まず大切なのは、小説を読み「面白かった」とか「感動した」などという文科省が喜びそうな感想は取り敢えず封印するということだ。

ではどうしたらいいのか? それは、純粋にその作品がどんな構造を持っているのかを考えるレッスンをすることだ。

すると、読んだ作品の数だけ小説の設計図を手に入れることができるだろう。その設計図は、あなたが小説を書く上で非常に参考になるはずだ。

やがて「私」というものの設計図も見えてくるにちがいない。

構造分析はどうすればいいのか? まずはお手本代わりに、課題図書でみなさんに提案した作品の構造分析をしてみようと思う。

 

【構造分析】太宰治「メリイクリスマス」

物語は、あるいは小説は、冒頭に欠落がなければならない──という話は、本論の中で詳しく書く予定で、今回は割愛します。

太宰は書き出しの天才だとぼくは思うが、この短編は「終戦直後」という欠落を一文で示し、だが驚くべきことに……(特別公開はここまで、続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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