10枚の掌篇小説を書くコツ 02 小説とは「物語る文章」と「描写する文章」の混合物である 山川健一

──歌の上手い人がいるように、小説が上手い人はいる。どんな人かと言うと、それは物語る文章と描写する文章の組み合わせが上手な人なのである──

 

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「私」物語化計画 2023年9月1日

特別公開:10枚の掌篇小説を書くコツ 02 小説とは「物語る文章」と「描写する文章」の混合物である 山川健一

【物語る、描写する】

皆さんが書いた「ジェノバの夜」は、どれも素晴らしい。問題は、これをどう書き直したら小説になるかということだ。今のままではまだレジュメなのである。

これをどう加筆したらまず10枚の掌篇小説として完成させられるか。

その方法を伝授します。

小説は、2つのタイプの異なる文章、あるいはパートによって成立している。

  • 物語るパート
  • 描写するパート

まず、これがプロット以前の基本である。

 

■物語る文章

物語るというのは、小学生が学校であったことを帰宅してからお母さんに話す──というような行為を指す。小学生は、お母さんに学校での出来事を説明しながら、実は同じ言葉を自分自身に向けて語っているのだ。物語化計画では、これを「私」を物語化すると言っている。

自分自身を物語化することで人は癒され、「私」の輪郭をつかむことができるようになる。物語るのは小学生にもできる言語活動だが、とても大切なレッスンなのだ。日本の義務教育では英語力をつけることにばかり力を入れているが、物語力をつけることの方が大事だと思う。東北芸術工科大学時代は、そんなことを考えながら教壇に立っていた。

ところで皆さんはレジュメを書く時に、言語が持っている「情報の折り畳み機能」を使っている。

 

〈十年後、二人は結婚した。〉

 

〈殺人現場となったバーを中心に五人の刑事が三十軒の店の聞き込みを行ったが、手がかりらしい手がかりを掴むことはできなかった。〉

 

小説なら、こんな具合に情報を数行に折り畳むことが可能だが、映像表現だと大変だ。二人が結婚するまでの十年、五人の刑事が三十軒の店の聞き込みを行っている様子を見せなければならないのだ。

皆さんの「ジェノバの夜」は、「情報の折り畳み機能」をフルに活用し、物語るパートによって成立しているわけだ。

小説における「物語る」パートには、回想シーンも含まれる。こうした言語の使い方は、カメラに例えるならば、標準レンズを使用していることになる。過去も、現在も未来も、標準レンズによって撮影されたポートレートみたいなものが並んでいるわけだ。

 

■描写する文章

あなたが家族の写真をたくさん集めたアルバムを作るとしよう。あるいは好きなバンドのライブ写真でもいい。その時、バストアップの写真ばかりを並べたアルバムにはしないだろう。

標準レンズだけではなく、ズームやワイドや、様々な構図で撮った写真を並べるはずだ。

つまり、メリハリをつける。

小説も、これと全く同じで、時には──続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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