特別公開:ロジックをオートマチックに発動させると、天使が舞い降りる 山川健一

「現代小説のための設計図」は、「正義だけは脱構築できない」という話よりわかりやすかったと言って下さる会員の方が多く、ほっとしてます。
蛇足にならないように、今回は補足と簡単な解説を試みたいと思います。この設計図は、この1年間のまとめみたいなものなので。


次代のプロ作家を育てるオンラインサロン『「私」物語化計画』会員用Facebookグループ内の講義を、一部公開いたします。

ご興味をお持ちの方は、ぜひオンラインサロンへご参加ください

 

『「私」物語化計画』

→ 毎週配信、山川健一の講義一覧

→ 参加者募集中→ 参加申し込みフォーム

 

「私」物語化計画 2019年10月25日

特別公開:ロジックをオートマチックに発動させると、天使が舞い降りる 山川健一

「現代小説のための設計図」は、「正義だけは脱構築できない」という話よりわかりやすかったと言って下さる会員の方が多く、ほっとしてます。

蛇足にならないように、今回は補足と簡単な解説を試みたいと思います。この設計図は、この1年間のまとめみたいなものなので。

現代小説のための設計図は、2つの相反するナラトロジーによって成立している。

「書き出しの現象学」
「隠された父の発見/隠された秘密の開示」

そして「隠された父の発見/隠された秘密の開示」は2つに分かれる。

「発語以前」
「発語以降」

前回は「隠された父の発見/隠された秘密の開示」のマップを紹介したので、今回は「書き出しの現象学」の復習で、来週「発語以前」について解説します。

【オートマティックに発動する書き出しの現象学】

まず、当たり前の話だが、小説を書いている最中に「設計図」「ナラトロジー」を意識する人はいない。主人公とともに怒ったり、涙を流したり、絶望の底で希望の光を探したりするのが作家という種族である。

全体について考えるのは、書き出す前──つまり発語以前と、疲れたので休憩してコーヒーを一杯飲んでいるような時だ。

作家が実際に原稿を書いているときには、もう一つの別の「ナラトロジー」がオートマティックに発動しているものだ。

 

このオートマティック、というところが重要なのだ。

それが、「隠された父の発見/隠された秘密の開示」とは正反対の、いわば対極にあるロジックで、僕はこれを以前「書き出しの現象学」と言う言葉で表現した。覚えていますか。

 

復習しておこう。

小説というのは何を書いてもいい。

雑多な現実というものがあり、この現実には始まりも終わりもない。しかし小説には1行目というのがあるので、この現実のどこかに切れ目を入れてスタートする必要がある。どこからスタートするかにはもちろん細心の注意が必要で、「発語」する前に綿密に設計図を制作する必要がある。

それがプロットだ。

小説を書く前の「前提」「プレミス」という考え方があるが今回は話がややこしくなるので触れないでおいて、次回以降解説します。

設計図、プロット、プレミス──なんでもいいが、とにかく小説を書く準備が整った。ここまでは極めて意識的な作業であると言うことができる。

しかし、最初の1行を書くと、2行目はオートマティックに1行目に拘束されることになる。2行目で、1行目と全く関係のないことを書くのは「工学的な間違い」なのである。

広い草原に、一軒の家がぽつんと立っている。それを空からの視点(神の視点)で描いてもいい。レンズがクローズアップしていき、庭で少女が花を見ている、その小さなブラウスの背中を描写する。

現実ではありえないそんな展開で小説をスタートさせても良い。

しかしその次のシーンで、全く関係のない事は書けないのである。草原の中にたった一軒家の向こうには断崖絶壁があり、その向こうには真っ青な海が広がっている──というように展開させていかなければならない。

縁側に並んで座った老夫婦が、色づいてきた柿の実を眺めているシーンから書くとする。その次の行は1行目を受けなければならないので、たとえば隣の住人が和菓子を持ってやってきた、というような展開にならざるを得ない。

小説が持つこうした構造、「書き出しの現象学」を体得していることが「隠された父の発見/隠された秘密の開示」というメソッド──物語の魔法を使う前提条件となる。

 

わかりやすく理解してもらうために、1人の友人にここで犠牲になってもらうが、会員の1人であるM君がこう言っていたことがある。

「ナラトロジーについて学べば学ぶほど物語への理解は深まっても、実際に自分の小説を書こうとすると、前よりも書けなくなっていることに気がついて愕然とするんですよね」

その理由は…..,(特別公開はここまで、続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

→ 毎週配信、山川健一の講義一覧

→ 参加者募集中→ 参加申し込みフォーム