10年振りに『魂の文章術―書くことから始めよう』を再読する 山川健一

──ライティングを禅の修行のように捉え、その喜びと自己発見のプロセスを獲得し、「書くこと」を生活の一部として取り入れること。
それはデビューを目指すのと同じように大切なことだ──

 

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2025年7月11日

特別公開:10年振りに『魂の文章術―書くことから始めよう』を再読する 山川健一

【女子学生に勧められた本】

毎日、40度近い暑さの日が続いている。ちょっと外に出るだけで息苦しい。僕はウォーキングを日課にしているのだが、最近は深夜2時頃に出かける。しかし、そんな時間でも熱気は地上にこもったままで、30分ほど歩いて戻ってくると汗だくである。

都内ではほとんど蝉の鳴き声を聴くことがない。これも不気味である。

中国では、豪雨が原因の洪水があちこちで報告されている。やはり地球は狂ってきているのだろうか?

僕はかつて自分が書いた長編小説の冒頭部分を思い出している。

 

 街路の熱気の上には熱気がかぶさり、頼りなく吹いていく風や灼けつく熱をはらんでいる。摂氏三十度を超える大気の層が地上一万メートルもつづいているのではないかと思われた。アスファルトの路面はぐにゃりと溶け出し、ぎっしりと列をつくるクルマのエア・コンディショナーはほとんど役に立たなかった。

停まったクルマの中から、ドライバー達は苛立たし気に電話をかけている。

家庭やレストランの台所では、配給されたばかりの肉や野菜が腐り、甘い臭気をたてているに違いない。

高い空は澄みきり、地上に降りそそぐ太陽の光を妨げる雲の存在は、もう長い間その姿を見ることができなかった。都市は、永遠に雨の恵みから見放されてしまったかのようだった。気象学者達は競ってこの猛暑についての仮説を述べたが、炎天下、清涼飲料水を買いもとめるためにコンビニエンス・ストアに集まり、レジ・カウンターに列を作った主婦達の苛立ちはおさまりそうにもなかった。あちこちで、この気が遠くなるほど暑い夏が原因だとしか思えない傷害事件や、自殺行為に等しいクルマの暴走が相ついでいた。

そんな夏がはじまったのは、わずか半月ほど前のことだ。

太陽が高層ビルディングのガラス窓をオレンジ色に染めながら街の向こうに沈んでいった後も、都市を被ったコンクリートから熱気が退くことはなかった。誰もが息をひそめ、雨が運んでくるはずの、肌に優しい涼気を待ち焦がれている。

『真夏のニール』山川健一デジタル全集 Jacks

 

この小説は熱波に引き込まれて主人公が不可思議な世界に導かれる──というSFなのだが、今年が舞台でもリアリティがあるだろう。

それにしてもこの暑さは異常だ。これから毎年のようにこうなのか? これで停電にでもなったら、何人もの人が亡くなるだろう。

さて、今年も前半が終了し、お盆休みが来週に迫っている。今週は皆さんに不思議な本を紹介したい。

『魂の文章術―書くことから始めよう』(原題:Writing Down the Bones: Freeing the Writer Within)という本だ。ナタリー・ゴールドバーグの代表作であり、ライティングを通じて自己表現と創造性を解放するための指南書である。

1986年に初版が出版され、アメリカで100万部以上を売り上げ、12カ国以上で翻訳されるベストセラーになっている。

ナタリーは1948年1月4日生まれなので、いまは77歳だ。

東北芸術工科大学で教員をやっていた頃、僕の研究室には、文芸学科の学生だけではなく、他学科の学生たちもよくやってきていた。版画や洋画やデザイン学科の学生達がやって来ては、いろいろなアドバイスを求められた。

ある日洋画の女子学生がやって来た。彼女は『魂の文章術―書くことから始めよう』にのめり込んでいて、その内容について語ってくれた。

「この本は────続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

 

 

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