神秘体験をコアに配置した小説を書く 02 オチョ・リオスの浜辺で遭遇した光の球体 山川健一

──音楽も小説も絵画も、その中心には自然の神秘が存在するのだ──

 

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「私」物語化計画 2023年12月8日

特別公開:神秘体験をコアに配置した小説を書く 02 オチョ・リオスの浜辺で遭遇した光の球体 山川健一

人間の意識は水面上の氷山の一部のようなもので、その下には膨大な無意識が存在する。

そして、無意識のさらに向こう側には大いなる存在、ハイアー・セルフというものが存在するのだ。僕らが出会う不思議な体験は、すべてハイアー・セルフからの信号なのだ。

そして、大事なことは、それらは決して偶然現れるのではないということだ。

僕らの人生に、偶然というものは存在しない。

それを認めるのは勇気のいることだが、それを認めた時から、きっと、新しい内面世界がひらけるはずだ。勇気をもってハイアー・セルフからの信号を受け止め、それが決して偶然ではないと心から認められた時、あなたの第三の眼が開くだろう。

僕はそれを、ジャマイカで学んだ。そいつは、ハイアー・セルフからのシグナルの一例だったのだと今は思う。

1993年にジャマイカの浜辺で体験したことを書こうと思う。僕は『ワン・ラブ・ジャマイカ』という本の取材のためにジャマイカに旅行した。十年ぶり、五度めのジャマイカ旅行であった。

オチョ・リオスの浜辺で、深夜ビーチ・チェアに寝ころがっていた。僕らは三人で、僕のマネージメントをしてくれているヘッドロックというオフィスの長吉秀夫という友人、それからカメラマンの山口昌弘氏が一緒だった。

僕らはぽつりぽつりと話していた。

頭の中ではボブ・マーリィの〈ナチュラル・ミスティック〉という曲が鳴り続いていた。

その時、海の上の暗がりに、ぽつんと光が現れた。ちょうどテニスボールほどの大きさだろうか。光はとても強く、マグネシウムでも燃やしたように白色に輝いている。そしてその中心は、濃いオレンジの三角形なのだ。

それが、スーッと滑らかに海面に降りてくる。それから光は点滅をはじめ、僕らがいるビーチの方へ向かってくる。

「おい、見えるか?」

声が震えてきてしまいそうなのを堪えながら、僕は隣りの長吉に言った。

「見えます。あっれえ、何なんだろう!」

その何ものかは、2メートルほどの距離を発光しながら飛び、次の2メートルは光るのをやめて飛ぶ。たとえば虫が飛んでいるふうではなく、急に向きを変えたりしながら、僕らのすぐ前までやってきた。

僕ら三人は、立ち上がっていた。

そいつは手を伸ばせば摑まえられそうなほどすぐ近くまで飛んできて、今度は上昇をはじめた。一度円を描くと、ビーチに沿って左の方向へ、人間の肩の高さぐらいの空間を飛んでいった。僕は走って光を追いかけ、だがそいつは、現れた時と同じように唐突に闇の中に消えたのである。

とり残された僕らは興奮して話し合ったのだが、その正体はわからずじまいである。中心がオレンジの三角形だったよね、と山口氏が言った。長吉は蛍ではないかと言ったが、僕は日本で何度も蛍を見ており、たった今見たものが決して蛍などではないことははっきりしていた。

僕はもう一度ビーチ・チェアに腰を下ろし、暗い海と、海の遥か上空に広がる星空を眺めた。

そして、これこそがボブ・マーリィの言う〈ナチュラル・ミスティック〉なのだと思ったのだ。それ以外には考えられない。

僕は2人に言った。

「今夜のことは、決して幻なんかではないと確認しよう。僕らは不可思議な光の球体を見た。何年経っても、その記憶が曖昧にならないようにしよう」

この体験は本にも書き、未だに鮮烈な映像として僕の中に残っている。
【長吉秀夫のノンフィクション】

この体験を、一緒にいた長吉秀夫も『不思議旅行案内 マリファナ・ミステリー・ツアー』(幻冬舎アウトロー文庫)に書いているので紹介しておく──続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

山川健一『物語を作る魔法のルール 「私」を物語化して小説を書く方法』

 

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