特別公開:レトリックを身につける4──小説のパーツごとにメタファーを設定することが可能である 山川健一

メタファーとは曖昧な概念だと書いた。文法的な、と言うか言語学的な定義を超えて、映画や漫画やアニメ、デザインに至るまで、ありとあらゆる表現のなかで使用可能である。メタファーが機能するのは言語表現に限らない。視覚の領域でも機能するのである。

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「私」物語化計画 2020年2月21日

特別公開:レトリックを身につける4──小説のパーツごとにメタファーを設定することが可能である 山川健一

【メタファーは越境する】

メタファーとは曖昧な概念だと書いた。文法的な、と言うか言語学的な定義を超えて、映画や漫画やアニメ、デザインに至るまで、ありとあらゆる表現のなかで使用可能である。

メタファーが機能するのは言語表現に限らない。視覚の領域でも機能するのである。

これは文学の領域でメタファーについて考えてきた僕の実感である。そんなに定義に厳密にならなくてもメタファーってあるよなと思ったわけだ。

そんな時ジョージ・レイコフとマーク・ジョンソンによる『レトリックと人生』(大修館書店)を読んで「概念メタファー」という考え方を知り、そうだよねと納得したのであった。ちなみにこの「概念メタファー」は吉本隆明が言う「概念喩」とは別のものだ。

概念メタファーとは認知言語学の用語で、「ある概念領域を別の概念領域を用いて理解する事」と定義されている。

たとえば僕らは「気分が高揚する」とか「気分が落ち込む」などと言う。「成り上がり」や「落ちぶれる」なんて言葉もある。

会社の「上司」と「部下」。

人間の感情や地位などの社会的概念に至るまで、「上」と「下」がメタファーになっているわけだ。

「黒」と「白」の概念メタファーは差別的だと批判されるが、ブラックマーケット(闇市場)やホワイトナイト(敵対的買収を仕掛けられた対象会社を買収者に対抗して友好的に買収または合併する会社)などという言葉もある。

メタファーは「彼女は薔薇だ」というような言語の領域を超えて(いわば古典レトリックを超えて)、もっと根源的な人間の認識に関わる場所で機能している原理なのだ──と考えられるようになって来た。

というわけで、ここからは広義な意味での隠喩・暗喩についてはメタファーというカタカナを使うことにする。カタカナだとライトな感じがして、言語の定義を超えて越境しても問題ないような気がするからだ。ま、僕の勝手な感じ方にすぎないが。

 

デザインの世界でも、テレビのリモコンのプレイボタンやストップボタンはその形だけで機能がわかる。メタファーになっているからだ。交通標識の「侵入禁止」や「横断歩道」も同じだ。

タロットカードの絵柄のシンボリックなモチーフもそうだ。天秤が公正を、白色が純潔を示している。

初めてマッキントッシュのファインダー画面を見た時にいちばん驚いたのはゴミ箱だが、あのデザインもメタファーである。削除という概念のメタファーをゴミ箱のデザインが果たしているのである──と考えていくと、僕らは文法から解放され少し自由になれる。

ちなみに、マッキントッシュのゴミ箱の当初のデザインは、ハエが飛び回っていたのだそうだが、それはあんまりだろうということで中止になったのだそうだ。中止にしてくれたスティーブ・ジョブズに感謝しよう。

 

【物語の単位ごとのメタファー】

ここで一度言葉の話に戻ろう。言葉の世界におけるメタファーを拡大していこうと思うのである。実はこれが僕が皆さんに伝えたいメタファーの話でもっとも重要なのだ。

厳密な意味での隠喩とはまず…..,(特別公開はここまで、続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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