特別公開:基礎的な文法の話──助詞音痴を治す 山川健一

「言語は、カオスに形を与え、無限にある世界をわかりやすく整理する機能を持っている。しかし、それはあくまでも正しい文法に則って言葉を使う場合に限られる。文法的な間違いは、可能な限り修正しなければならない。

簡単そうに見えて、だが実のところとても難しい。」


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「私」物語化計画 2019年11月29日

特別公開:基礎的な文法の話──助詞音痴を治す 山川健一

今週からは、基礎編です。ブートキャンプというやつだ。

目的は「正しい日本語を書く」こと。これはもちろん小説を書く上では必須条件だし、「私」の謎を解き明かすべくノートを書く場合にも必要なことである。

言語は、カオスに形を与え、無限にある世界をわかりやすく整理する機能を持っている。しかし、それはあくまでも正しい文法に則って言葉を使う場合に限られる。文法的な間違いは、可能な限り修正しなければならない。

簡単そうに見えて、だが実のところとても難しい。

 

歌をうたうと、調子が外れてしまう人がいる。シンガーがレコーディングの際、「コーラス部分のトップがちゃんと当たってないよ。フラットしてる」というようなレベルではない。

まるっきり外れてしまう──つまり音痴と言われる人たちだ。

Aの部分はちゃんと歌えるのに、コーラスのパートになると転調してしまう人もいる。

これは技術の問題ではなく、精神的な問題なのではないかと僕は密かに考えている。文字通り「発語」「発声」の問題ではないかと思うわけだ。だって、コーラス部分で転調する方が難しいではないか!

ここまで前置きすればもう察しがついたと思う。つまり、文章を書く際にも「音痴」としか思えない人たちがいる──ということを書きたいのだ。

僕は東北芸術工科大学で8年間教員をやったが、300人以上の教え子の中にも、この「音痴」はいた。

その多くは、二つに大別される。助詞の使い方を間違えているパターンと、主語と述語がきちんと対応していないケースだ。これを修正するのが非常に難しい。
【助詞とは何か?】
まず助詞の問題からいこう。
助詞とは何か。ウィキペディアより引用する。

 

助詞(じょし)とは、日本語の伝統的な品詞の一つである。大和言葉においてはかつて「あとことば」と呼ばれていた。他言語の後置詞、接続詞に当たる。

 

日本語においては、単語に付加し自立語同士の関係を表したり、対象を表したりする語句の総称。付属語。活用しない。俗に「てにをは」(弖爾乎波・天爾遠波)か「てにはを」(弖爾波乎)と呼ばれるが、これは漢文の読み下しの補助として漢字の四隅につけられたヲコト点を左下から右回りに読んだ時に「てにはを」となることに因るものだ。

 

日本語の助詞の使い分けには曖昧さがあり、例としては、「海に行く」と「海へ行く」の「に」「へ」や「日本でただ一つの」と「日本にただ一つの」の「で」「に」や「目の悪い人」や「目が悪い人」の「の」「が」、「本当は明日なんだけど」「お言葉ですが」「さっき言ったのに」「終わるの早いし」に見られる終助詞的な接続助詞の使用などが挙げられる。また、格助詞さえ覚えていれば助詞のおおよそは分類できる。これは、副助詞は数多くあるが、接続助詞や終助詞はわかりやすく、格助詞はそれほど数が多くないためである。(ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%8A%A9%E8%A9%9E

 

助詞のアウトラインをもう少し丁寧に解説しておこう。

助詞は言葉に意味を与える語だ。「が」「も」「の」「を」などが助詞だ。格助詞・接続助詞・副助詞・終助詞などがある。

・薔薇が咲いた。(主語であることを示す助詞「が」)
・寒いから行かない。(理由をあらわす助詞「から」)
・猫をいじめるな。(禁止をあらわす助詞「な」)

助詞の特徴は、次の2つだ。

 

1. 助詞は付属語であり、それだけでは意味をなさない。他の語に付属するため付属語と呼ばれる。動詞や名詞などの自立語とは違うということだ。

助詞はそれだけでは意味がわからず、自立語(動詞・名詞・形容詞・形容動詞)の後ろにくっついている1文字から3文字の付属語なのだ。

しかし、この「1文字から3文字」がセンシティブないい仕事をするのである。

 

2. 活用がない

助詞には活用がない。つまり形が変わらない。助詞とよく似た名前の助動詞というのがあるが、助詞と助動詞の違いは活用があるかないかだ。

ここでついでに助動詞の活用例をあげておく。

ちなみに、活用とは、後ろにくる語によって形が変わることを言う。

助動詞「させる」の語尾を変化させる、つまり活用させるとこうなる。

未然形:させない
連用形:させた
終止形:させる
連体形:させるとき
仮定形:させれば
仮定形:させろ、させよ

というわけで、助詞は活用がなく、助動詞は活用がある。

いい仕事をするが地味に見える助詞は、格助詞・接続助詞・副助詞・終助詞の4つに分類される──と再確認した上で、いちばん大切で、選択間違いしやすいのが格助詞だ。

と言うわけで、今週のブートキャンプは格助詞に突っ込みます。

 

(1)格助詞

格助詞は、おもに体言(名詞)のうしろについて、その体言が、文中の他の言葉に対してどのような関係かを示す働きをする助詞だ。「が・の・を・に・へ・と・より・から・で・や」の10種類がある。

そして、格助詞には主語・連体修飾語・連用修飾語・並立をあらわす4つの使い方がある。
[1]主語であることを示す働きをする「が」「の」

助詞「が」「の」をつけることで、主語であることを示す。

薔薇が咲く。
薔薇の咲く季節だ。

という具合だ。「の」も主語であることを示している。
[2]連体修飾語であることを示す「の」

助詞「の」をつけることで、連体修飾語であることを示す。連体修飾語は体言を修飾する語だ。

薔薇の花束。

助詞「の」が、すぐ後ろの体言「花束」を修飾している。
[3]連用修飾語であることを示す「を」「に」「へ」「より」「で」

助詞「を」「に」「へ」「より」「で」をつけることで、連用修飾語であることを示す。

連用修飾語というのは、動詞、形容詞、形容動詞を修飾する語だ。

サラダを食べる。
将来スターになる。

助詞「を」「に」がすぐ後ろの用言「食べる・なる」を修飾しているわけだ。
[4]並立の関係であることを示す「と」「や」「の」

助詞「と」「や」「の」などをつけることで、並立の関係であることを示す。

ギターとハモニカを買う。
ギターやハモニカを持って。
言ったの、言わないので押し問答になった。

助詞の覚え方には、有名なこんな語呂合わせがある。

「を・に・が・と・より・で・から・の・へ・や」(鬼が戸より出、空の部屋)

まあ、これを覚える必要はないが、格助詞の役割だけはきちんと理解しておくこと。

接続助詞などその他の助詞については来週解説します。
【助詞音痴を治す3つの方法】

なんだかややこしい話だが、「助詞音痴」の人は…..,(特別公開はここまで、続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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