特別公開:物語論から学ぶ3 プロップが『昔話の形態学』で提示した機能とは何か? 山川健一
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『 今週は「お勉強」の週にしたいと思います。
これまで僕が解き明かしてきた「物語の構造」は、プロップやバルトからキャンベルまでのナラトロジー(物語論)をミックスし、アレンジして構築してきたわけですが、そろそろスタート地点のプロップについてきちんとお伝えしたいと思う。
ややこしい話で、ちょっと難解かもしれないが、可能な限りわかりやすくお伝えしたいと思います。』
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「私」物語化計画 2019年7月19日
特別公開:物語論から学ぶ3 プロップが『昔話の形態学』で提示した機能とは何か? 山川健一
『不思議の国のアリス』と『シンデレラ』では、『不思議の国のアリス』の方が人気があったようだ。
僕自身もアリスの方が好きなのだが、自分の作品で『シンデレラ』パターンの長編がないか考えてみたら、『ロックス』がそうかなという気がした。
この作品は無名のミュージシャン同士が知り合い、バンドを結成し、成功を目指すいわゆるサクセスストーリーなのだが、『シンデレラ』と決定的に違うのは登場人物たちが「ロックしたい!」という強い意志を持っている点だろう。『ロッキー』タイプなのかな?
コメント欄を使っての皆さんの会話を読んでいて、「何も努力しなくても王子様と結婚できる」という構造が好きになれるかどうかで評価が分かれるのだなと気がついた。
アリス派の楠 章子さんの《児童文学作家をめざす人は、シンデレラ曲線のお話を一度は書いてみるべきのような気がします》というコメントは、本当にその通りだなと思います。児童文学に限らず、誰もが一度はシンデレラ曲線で小説を構想してみるべきだと思う。
お前も書いてみろ、と僕は自分自身に言い聞かせた次第です。
宮下恵茉さんのコメントも非常に貴重です。
《今の児童書のエンタメ(児童文庫)ではアリスとシンデレラを足して2で割った構造の作品を求められます。
冒頭から読者の関心を惹きつつキャラには割とシリアスな欠落を抱えさせ同時に魅力的な個性を持たせる。
ラストまで一気に読ませるようにエピソードを盛り込み、一巻ごとにラストはきちんとオチをつけつつもシリーズとしての背骨を通す。
そしてそのシリーズ展開も売り上げによって突然延ばされたり打ち切られたりします。かなりハードル高いことを要求されます。これを4ヶ月スパンで何冊もクリアしなくてはならず本当に大変です。》
さて、今週は「お勉強」の週にしたいと思います。
これまで僕が解き明かしてきた「物語の構造」は、プロップやバルトからキャンベルまでのナラトロジー(物語論)をミックスし、アレンジして構築してきたわけですが、そろそろスタート地点のプロップについてきちんとお伝えしたいと思う。
ややこしい話で、ちょっと難解かもしれないが、可能な限りわかりやすくお伝えしたいと思います。
『シンデレラ』の構造は見て来た通りだが、『ドラえもん』や『ハリー・ポッター』や『スパイダーマン』も似たような構造を持っている。
シンデレラやのび太、ハリーはいじめらる弱い存在である。シンデレラをいじめるのが継母と姉達、のび太をいじめるのはジャイアントとその取り巻きのスネオ、ハリーをいじめるのは従兄のダドリーである。太った体格までダドリーとジャイアンはよく似ている。
しかし、シンデレラもハリーものび太も、魔法使いによって「魔法」の力を受け取ることにより、いじめる相手との関係を逆転させることに成功する。
のび太の場合、魔法使いはドラえもんだと考えればいい。
『スパイダーマン』では、主人公のピーターが科学展覧会場に出かけたところから物語が始まる。放射線照射の実験が行われ、天井から降りてきた一匹のクモが、その放射能を浴びてしまう。実験を見学していた勉強好きの学生のピーターの手に、放射能を浴びて突然変異をおこしたクモが噛み付いた瞬間からピーターの体に力があふれ、クモのような不思議な能力が身につく。
こうしてピーターはスパイダーマンになり、力関係を逆転させるわけだ。
こんなふうに見ていくと、童話や漫画やハリウッド映画といった形態は違っても、複数の物語が似たような構造を持っていることに気がつくだろう。
『ドラえもん』の作者の藤子不二雄は既に亡くなっている。にも関わらず、新作が公開され続けている。
なぜそんなことが可能なのだろうか?
『クレヨンしんちゃん』にせよ『サザエさん』にせよそうだ。
それは……(特別公開はここまで、続きはオンラインサロンでご覧ください)