特別公開:物語論から学ぶ2 あなたは『不思議の国のアリス』と『シンデレラ』のどちらが好きですか?

次代のプロ作家を育てるオンラインサロン『「私」物語化計画』会員用Facebookグループ内の講義を、一部公開いたします。

『 今週は2つの童話を比較しながら、物語の構造について考えてみたい。このサロン『「私」物語化計画』には児童文学の作家の方たちが多く、釈迦に説法になってしまいそうがお付き合いください。

扱うのは『不思議の国のアリス』と『シンデレラ』である。あなたはどちらが好きですか?』

 

ご興味をお持ちの方は、ぜひオンラインサロンへご参加ください

 

『「私」物語化計画』

→ 毎週配信、山川健一の講義一覧

→ 参加者募集中→ 参加申し込みフォーム

 

「私」物語化計画 2019年7月12日

特別公開:物語論から学ぶ2 あなたは『不思議の国のアリス』と『シンデレラ』のどちらが好きですか? 山川健一

今週は2つの童話を比較しながら、物語の構造について考えてみたい。このサロン『「私」物語化計画』には児童文学の作家の方たちが多く、釈迦に説法になってしまいそうがお付き合いください。

 

扱うのは『不思議の国のアリス』と『シンデレラ』である。あなたはどちらが好きですか?

どちらもあまりにも有名な作品で、知らない人はいないだろう。ただし、ディズニーの映画が作られてからは、世界中でこの2つの童話はほとんどディズニー作品とイコールになってしまった。いわゆる、デファクトスタンダード(既成の事実)というやつだ。『くまのプーさん』もそうだ。

困ったことだが、僕1人が抵抗したところでどうにもならないので、ストーリーそのものはいっそのことディズニー版に依拠することにしよう。

 

とはいえ、ここは『「私」物語化計画』である。それがディズニーだけでは情けないので、原作のアウトラインだけでも紹介しておきます。

『不思議の国のアリス』(Alice’s Adventures in Wonderland)は、イギリスの数学者チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンが、幼い少女であったアリス・リデルのために話して聞かせた物語がもとになっている。アリスの父親はヘンリー・リデルと言い、リデルの一家は何年ものあいだドジソンと親しく交流した。とりわけ3姉妹、ロリーナ、アリス、イーディスと親しく付き合い、リデル三姉妹を連れてのボート遊びは、一種の習慣となっていた。

ドジソンは生来の吃音に苦しんでおり、だが子供たちと話す時には普通に話せた──という話がある。これは一種の神話である。アリスを含めた少女たちの写真を千枚以上撮影した。ヌードも含まれていた。

7歳のアリス(1860年、ルイス・キャロル撮影)

7歳のアリス(1860年、ルイス・キャロル撮影)

それは彼にとって汚れなき少女が神にも等しい存在だったからだと考える人もいるし、単に小児性愛者だったと見る人たちも存在する。これもまた、今ではアリスを巡る神話の一つである。

ドジソンはリデル三姉妹とピクニックに行く途中、アリスの物語を思い付き、これを子供たちに語って聞かせた。アリス・リデルに文章にして欲しいとせがまれ、ドジソンは第2回ロンドン万国博覧会見物のために乗った列車内で執筆する。

書き上げられた物語に手書きの挿絵を添え、《親愛なる子へのクリスマスプレゼントとして、夏の日の思い出に贈る》との献辞と共にこの本を贈ったのである。この本のタイトルは『地下の国のアリス』だった。

それを読んだ友人たちの間で評判になり、やがてルイス・キャロルのペンネームで出版することになった。1865年のことである。

続編に『鏡の国のアリス』がある。

 

アリスが白ウサギを追いかけて不思議の国に迷い込み、しゃべる動物やトランプの女王や兵隊など、不可思議な存在と出会いながら冒険するお話だ。

LSDでもやってるんじゃないの、というぐらいぶっ飛んだストーリーだが、この作品は結果的に、19世紀半ばのイギリスの児童文学を支配していた教訓主義から、児童文学を解放したのである。

作中に挿入されている詩や童謡の多くは当時よく知られていた教訓詩や流行歌のパロディなのだそうだ。不可思議な童話は硬直した社会そのものを対象化してもいたのである。

 

【『不思議の国のアリス』の構造分析】

 

それでは『不思議の国のアリス』の構造について考えてみよう。

物語の冒頭部分、アリスは川辺の土手で本を読んでいる姉の横に座っていた。退屈だった。

そこに洋服を着た白ウサギが、人間の言葉を喋りながら通りかかる。

驚いたアリスは、白ウサギを追いかけ、ウサギ穴に落ちてしまう。

さまざまなものが壁の棚に置いてあるウサギ穴を落下して行き、落ちた場所は広間だった。アリスはそこで、金の鍵と通り抜けることが出来ない小さな扉を見つけるのである。

数学者のルイス・キャロルがこれまでに僕が紹介してきた物語論(ナラトロジー)の構造を忠実に守っていることに気がつかれましたか?

 

物語の冒頭になければならない「欠落」とは、アリスが退屈しているということだ。白ウサギが登場し、しかしそのウサギは洋服を着て人間の言葉をしゃべる不思議な存在なので、アリスは「否応なく」旅立つことになる。

ウサギの穴がその入り口だ。

最初に倒す「小鬼」「橋守」とは、通り抜けることが出来ない小さな扉である。

 

冒険が始まり、アリスはいくつかのイニシエーションをクリアしていく。そのたびに、白ウサギをはじめ、キノコの上の大きなイモムシ(第5章 イモムシの助言)などの助言者に助けられる。

いちばん魅力的な助言者は、アリスに三月ウサギと帽子屋の家へ行く道を教える、樹の上にいるチェシャ猫だろう。

さて、『不思議の国のアリス』における「隠された父の発見」「秘密の開示」とは何だろうか?

この作品に父親は登場しないので、「秘密の開示」ということになるわけだが、その舞台は……(特別公開はここまで、続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

→ 毎週配信、山川健一の講義一覧

→ 参加者募集中→ 参加申し込みフォーム