特別公開:物語論から学ぶ1 「助言者」を設定出来るとあなたの小説は2割増しで輝く 山川健一
次代のプロ作家を育てるオンラインサロン『「私」物語化計画』会員用Facebookグループ内の講義を、一部公開いたします。
『 今週は気軽に流そうかな?
その方が読まれる皆さんも楽だよな。
──と思ったのだが、僕は案外真面目な性格らしく、この段階でどうしても触れておかなければならない事柄を思い出してしまった。
それが「助言者」である。
これは物語論(ナラトロジー)の用語だ。ナラトロジーというのは、物語や語りの技術と構造について研究する学問のことだ。』
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「私」物語化計画 2019年7月5日
特別公開:物語論から学ぶ1 「助言者」を設定出来るとあなたの小説は2割増しで輝く 山川健一
先週終えたクライムノベルの連載、書く方も大変でしたが、朝からあの内容を読まされる会員の皆さんも大変だったろうと推察します。
「正直に言って、あれを朝から読むのは大変でした。私は会社から帰って夜読みましたけど、真夜中にあれを読むのはまた別の意味で大変でした。いや、いま必要なことだし深い内容で面白かったですけど」
会員の女性の一人がそう言ってました。
いずれにせよ、お疲れ様でした!
クライムノベルについては、僕の文学的な先生である秋山 駿さんとの対談を毎週火曜日に配信していますので、ぜひお読みください。
今週は気軽に流そうかな?
その方が読まれる皆さんも楽だよな。
──と思ったのだが、僕は案外真面目な性格らしく、この段階でどうしても触れておかなければならない事柄を思い出してしまった。
それが「助言者」である。
これは物語論(ナラトロジー)の用語だ。ナラトロジーというのは、物語や語りの技術と構造について研究する学問のことだ。
物語論は、ロシア・フォルマリズムに始まり、やがて構造主義に昇華していった。ストーリーを味わうと言うよりは内容の類型に関心を向ける研究だ。
表現、つまり「言説」の形式・構造に関心を向ける研究なのだ。
もっとも、その歴史は20世紀よりずっと古く、アリストテレスの『詩学』やプラトンの『国家』にまで遡るという説もある。
有名なのは最初に物語論を提唱したロシアのウラジミール・プロップ、若い頃から僕が好きだったフランスのロラン・バルト、映画監督のジョージ・ルーカスの先生としても有名なジョーゼフ・キャンベルなどだ。
これらの研究は、1970年代にジェラール・ジュネットが完成したとされ、その後は構造主義の没落とともに衰退していったと考えても差し支えないだろう。
ま、乱暴に言ってしまえば研究することがなくなってしまったのだろう。
手っ取り早くナラトロジーを知りたいという方にお勧めなのは、『ナラトロジー入門 ―プロップからジュネットまでの物語論』(橋本陽介/水声社)という本だ。簡潔で分かりやすい。僕より30歳ぐらい若く、専門は中国文学の研究者の方の本です。
橋本陽介『ナラトロジー入門―プロップからジュネットまでの物語論』(水声文庫)
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ただし、物語論はすでにあるテキストを分析して研究したものであり、さまざまなバリエーションが存在する。方言みたいなものです。それらはもちろん小説を書く上で参考にはなるが、小説執筆のための入門書そのものではない。
仕事柄僕は結構たくさんの物語論の本を読んだが、読めば読むほど混乱してくる。だから都合の良いメソッドだけを取り出し、それを学生たちに講義してきたのである。
この原稿を書くために、山のように積み上げた書物をひっくり返しているのだが、どこで読んだのかどうしても見つからない。なので、多くの物語論の本を読んだ上で、さらに実作の経験上重要だと思った「助言者」と言う概念について僕なりの考えをお伝えしたいと思う。
ごくシンプルな小説のストーリーを考えてみよう。
男が女と出会う。物語は「欠落」が前提なので、この主人公の男は長い間過酷な孤独を抱えていた──というような設定にしなければならない。
胸の中のジグソーパズルが、彼女と出会うことによって、ようやく完成した。彼女こそが最後のピースだったのだ。というような恋愛がスタートする。
しかし……(特別公開はここまで、続きはオンラインサロンでご覧ください)