400字詰原稿用紙10枚で作品を書いてみよう 01 書く喜びを思い出す 山川健一

──あなたの体の中をナラトロジーがあたかも血液のように流れ始めたということなのだ──

 

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「私」物語化計画 2023年7月21日

特別公開:400字詰原稿用紙10枚で作品を書いてみよう 01 書く喜びを思い出す 山川健一

【物語化計画の教科書】

今日は7月17日の午後である。明後日、古希祝い&出版パーティをやるので、早めに原稿を書いておかないとまずいと思い、こうして書き始めた。

ロックの世界の後輩が、「古希ライブやってくださいよ。ライブハウスの予約とります」と言って、Dのキーのブルースハープをくれた。

有限実行の男で、神田のTHE SHOJIMARUの予約も入れてしまった。マジかよ? だったら出版記念パーティも兼ねようということになり、スタッフは急に急いで仕事しなければならなくなり、唖然としながらもやってくれて、当日30冊だけ見本搬入ができることになった──はずだ。

物語を作る魔法のルール』はかなり分厚い本だが、それでも物語化計画でこれまで扱った内容の3分の1程度をカバーしているに過ぎない。もちろん、書き下ろした部分も多い。

ベースと言うか、基礎なので、『「私」物語化計画』ではこういうことをやっているのかという概略はよくわかるはずだ。

Facebook上では、とりわけ初期の原稿などは、かなり奥のほうに入ってしまい、読み返すのが難しいという声が多数あった。早く本にしてほしいとあちこちで言われた。紙の本なら、ページをパラパラとめくってみればいいわけだからね。

こんなに時間がかかってしまい、それはひとえに僕の怠惰のせいなわけで、申し訳ありませんでした。やっと刊行できてほっとしています。ま、『物語を作る魔法のルール』は物語化計画の教科書だね。

皆さんも、是非とも最初のページから読んでみてください。

 

山川健一『物語を作る魔法のルール 「私」を物語化して小説を書く方法』

 

【書く喜びを思い出すために】

そして、読み終えたら、本の内容のことはきれいさっぱり忘れてください。とは言え、全部を忘れることはむしろ難しく、何かが残る。それはとりもなおさず、あなたの体の中をナラトロジーがあたかも血液のように流れ始めたということなのだ。

あなたは今、小説を書く「体」を手に入れている。ほんとです。書いてみよう。いい作品が仕上がるはずだ。こうしたチャンスは滅多にあるものではなく、それを生かしてほしい。

物語化計画では、基礎コースの皆さんを含めて400字詰原稿用紙に20枚から30枚の短編を書いて「推薦作」に応募することができます。その中からセレクトして、アンソロジー(電子書籍+ペーパーバック)に作品が収録される

ただし今は、そういうことも忘れて、10枚で作品を書いてみよう。何のために? 書く喜びを思い出すためだ。小説でもいいし、エッセイでもいいし、エッセイ風の小説でもいい。コントでもいい。

最近、ジャンボ亭ばずーかさんというお笑い芸人の方が参加され、YouTubeなどで彼のコントを見て、「ナラトロジーはコントや落語にも適応できるのだな」と僕は思ったのだった。

落語にしてもコントにしても、スタートしてすぐに聴衆を「異世界」に引きずり込むことが必要だ。カフカ的な、あるいはカミュ的な不合理な世界が展開し、その中で四苦八苦する主人公を聴衆は面白いなあと思って見る。

つかこうへいの芝居の構造はまさにそうだった。

熱海で殺人事件があり、三流の犯人である大山金太郎を、刑事の木村伝兵衛が一流の犯人に育て上げるという「異世界」が展開されるわけだ。

たとえば「恥の多い生涯を送って来ました」という一言で始まるコントは面白そうではないか。これは有名な太宰治の『人間失格』の冒頭部分だが、これくらいインパクトのあるスタートだと観客は引き込まれるだろう。

同じ太宰治の『鉄面皮』の冒頭は「安心し給え、君の事を書くのではない」というスタートなのだが、これもコントに応用できそうである。

ジャンボ亭ばずーかさんのコントに「売れない演歌歌手」というのがあるが、この構造ならナラトロジーを導入する余地があるように思う。

話を戻すが、10枚という短さなので、プロットを書く必要はない。書きたいイメージを思い浮かべるだけでいい。それが、1行目になる。

真ん中は好きに書いていい。

ただし、結末を締める必要がある。つまり、書きたいイメージを思い浮かべ、最後の1行を締める。これだけでいい。そんな作品を書くことで、僕は皆さんに「書く喜び」を思い出してほしいのだ──続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

山川健一『物語を作る魔法のルール 「私」を物語化して小説を書く方法』

 

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