物語あるいは作家には2つのルートがある 山川健一
壊れてしまった自分を立て直す方法は、たった1つしかない。それは、物語や小説の2つのルートを自分の中で1つに統合することだ──
次代のプロ作家を育てるオンラインサロン『「私」物語化計画』会員用Facebookグループ内の講義を、一部公開いたします。
ご興味をお持ちの方は、ぜひオンラインサロンへご参加ください。
→ 毎週配信、山川健一の講義一覧
→ 参加者募集中→ 参加申し込みフォーム
「私」物語化計画 2023年1月13日
特別公開:散らかった部屋で暮らしていても、原稿は整理整頓しよう(小説の作法) 山川健一
【壊れてしまった自分】
今年最初の原稿である。というわけで、少し遅いが新年の挨拶をしなければならない。あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。今年もよろしくお願いします。
2023年は大変な年になるだろう。芸能人までもが「新しい戦前」だと言っている。
異次元の金融緩和が終わり、日銀は利上げに踏み切った。夏ごろには、多くの企業が資金繰りに窮するのではないだろうか。大手企業までもが倒産し、失業者が増え、防衛費の増大のために、最終的には消費税が値上げになり、僕らの生活はさらに困窮する。
まぁ、新年早々、暗い話をするのはよそう。
しかし、いずれにせよ、嵐のような2023年が始まったのだ。日本も世界も、壊れているのだと思う。僕自身もまた、壊れているのだろう。それを立て直すことが急務だ。国家や世界の事は、さすがに手に余るので、とりあえず僕は僕自身を立て直すことを今年の目標にしようと思っている。
以前は、お正月になると、皆が1年歳をとった。これを数え年という。歳をとると、大切なものが増える。守りたいものが増える。それは家族だったり、友人だったり、僕の場合なら、物語化計画の仲間だったりする。さらに、自分自身が積み上げてきた仕事の業績や、これから達成しなければいけない人生のテーマなど、大切なものは19歳の時に比べれば、格段に大きくなり、僕らの背中にのしかかっているのだ。
時々それを放棄したくなることがあるのも事実だが、何しろ、それは、家族や友人や自分の仕事なのだから、簡単に放り出してしまうわけにはいかない。
僕は、こう見えて案外責任感が強い男なので、何かを放り投げた記憶はあまりない。しかし、その責任の大きさに押しつぶされて、自分が壊れてしまっては困る。
2023年は、物語化計画全体の目標として、「壊れてしまった自分を立て直す」ということを共有できればと思う。
いやいや私は壊れてなんかいない、とおっしゃる方もいるかもしれないが、戦争に蹂躙される世界や、異常な状況が続く日本という国家にいる限り、正常な神経を保つのは難しいのではないだろうか?
壊れてしまった自分を、あるいは壊れてしまいそうな「私」を、何によって立て直せばいいのか。物語によって立て直すのである。
【小説家の2つのルート】
僕は長く作家をやってきたが、物語あるいは文学には2つのルートがあるのだなということをこの頃強く感じる。1つは、新人賞に応募して、雑誌に自分の小説が載り、やがてそれが単行本になり、文庫本になり──つまり商業的な作家としてのルートである。
走り続けているときには気がつかないのだが、実は文学や小説や物語には、もう一つの重要なルートがある。それは、物語の本来の機能として「社会にとってなくてもいいもの」だという側面があるということである──続きはオンラインサロンでご覧ください)