エミリー・ブロンテ『嵐が丘』の方法を検証する 3  山川健一

小説を書く場合に重要なのは、「何を書くか」ではなく「何を書かないか」なのである──

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「私」物語化計画 2022年3月25日

特別公開:エミリー・ブロンテ『嵐が丘』の方法を検証する 3  山川健一

【ヒースクリフはどんな方法で財を築いたのか】

ウクライナ戦争は日々刻々と進行し、多くの市民たちが殺され、日本にいても何かを楽しむという気分には到底なれない。

今日、ゼレンスキー大統領が日本の国会でスピーチした。アメリカ向けのスピーチでは真珠湾攻撃を混ぜて米国民の関心をひいたりしたので、日本でも日露戦争や広島を引き合いに出すのではと思ったのだが、作為のないシンプルなものだった。それだけに真摯な姿勢を感じて好感が持てた。

ウクライナだけの戦争ではない、世界が舞台の民主主義と暴力の闘いなのだ。

話を聞きながら、TwitterやTikTokで見た戦争の映像が、僕の脳裏でフラッシュバックした。こうしたマイナスの圧力が、多くの人々の内面を押しつぶそうとしている。

こういう時は、状況を注視しながらも、それぞれの日常生活を取り戻すことが大切だろうと僕は思う。というわけで、『嵐が丘』に戻る。

キャラクターメイキングという観点から見て、この作品は秀逸である。登場人物のキャラクター造形がしっかりしているという意味だ。

ブロンテが一八四七年に著した本書は、嵐が丘と呼ばれるヨークシャーの屋敷の主人に拾われてきた少年、ヒースクリフがもたらす悲劇を描いた作品である。主人の娘であるキャサリンへの強い愛を抱いたヒースクリフは、彼女の兄のヒンドリーからの虐待に耐えていた。

だが、彼女がリントン家の長男と結婚することを知って、彼は家を出る。

そして三年後、莫大な富を手に帰還したヒースクリフは、自分とキャサリンの間を引き裂いた者たちへの復讐を始めるのだ。ヒースクリフがどんな方法で財を築いたのか、明確には明かされない。

なぜか?

そこにこの小説の方法的な秘密の一端が隠されている──続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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