特別公開:自伝の書き方を教えます4 山川健一

小説の登場人物は、いかなる場合も作者の分身だ。作者の分身でない登場人物は、作品の中で生き生きと呼吸することができないのである──

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「私」物語化計画 2020年7月10日

特別公開:自伝の書き方を教えます4 山川健一

豪雨で九州や滋賀、長野が大変なことになっている。豪雨はまだ続くようだし、さっきは地震があったし、コロナは第二波が来そうだし、皆さんは大丈夫ですか?

僕は元気にやっていますが、『「私」物語化計画』の会員のみなさんは全国にお住まいなので、心配しています。

気を取り直して、今週の講義を始めます。

 

自伝を書くことの意味とその価値について、前回までにお伝えした。

自伝を書くとはすなわち、自分探しの旅の記録なのである。そして、自伝こそキャラクターメイキングが必須であり、そのために「私」を分割する必要があるのだということを書いた。実践コースで【「私」を分割する】という課題を出したことがある。

自分という人間を見つけよく内省してみて、人格を2つに分割する。それを具体的な2人の登場人物としてキャラクターメイキングし、2人が会話するシーンを小説として書いてください──という課題だ。

小説の登場人物は、いかなる場合も作者の分身だ。60代の男が10代の少女を書くときにも、10代の少女が60代の男を書くときにも、事情は同じである。作者の分身でない登場人物は、作品の中で生き生きと呼吸することができないのである。

ここで、簡単に「私」というものの構造を解説しておこう。私見によれば、「私」の構造は、中核から外縁に向けてこんな構造になっている。

 

【「私」の構造】
エゴ/インナーチャイルド(自我)

セルフ(自己)

外界

ハイアーセルフ

 

インナーチャイルドとハイアーセルフというのはヒーリング用語で、機会を作って後日説明するが、今回は長くなるので詳細は省略。

いずれにせよ僕らの精神の中心にはエゴがある。

それが確固としている人ほど、表現や芸術には向いていると言える。

セルフというのは、コントロールされた自己だ。大人になるにつれ人間はエゴを抑え、社会との関係から自己を形成していく。社会に適応したエゴ、それがセルフだ。

ハイアーセルフというのは、より高次な自己のことである。本来の自己であり、魂としての存在で、100%ポジティブな自分だ。

おそらく、その向こうにはカール・グスタフ・ユングの言う集合的無意識がある。

ユングが提唱した集合的無意識とは、分析心理学の中心概念だ。人間の無意識の深層には、個人の経験を越えた構造領域があり、それは人類に共通のもので、未来予知する人達はこの集合的無意識にアクセスする能力がある人達なのだとユングは言う。

非常に魅力的な仮説だと僕は思うのだが、ユングの先生であり父親的な存在だったジークムント・フロイトは「息子」のこうした神秘主義的な傾向を嫌い、二人は袂を分つのである。

ユングの集合的無意識は元型(グレートマザーとかトリックスターとかいう、あれです)よりも重要な概念だと僕は思っている。

ユングとフロイトの関係も面白いのだが、脱線してしまうのでこれも今回は省略します。

 

僕らの内面的な領域、エゴとセルフ、セルフと外界、外界とハイアーセルフはそれぞれ摩擦が強ければ強いほど面白いストーリーが生まれる。「俺は絶対に就職なんかしたくないんだ。社会には屈服しないぞ」と感じている主人公を立てたストーリーの方が、「就職はしたくないけどなぁ」と漠然と感じている主人公よりもスリリングなストーリーを紡ぐということだ。

それでは、そろそろ自伝を書くための課題を出します。

「私」とはエゴ/インナーチャイルドを中心にした工学的な構築物であるという世界観を前提に、次のシートに自由に皆さんの想いを書き込んでください。

 

【課題「自分探しの旅シート」】

1. コンセプトを設計しハイ・コンセプトを探す。

 

2. 「私」を分割し、バック・ストーリー、内面の悪魔について考える。

 

 

3. 分割した「私」を繋ぐイノベーションとは何か? 可能なら具体的に。

 

 

 

【注釈/ハイ・コンセプト、イノベーション》

これだけではよく分からないと思うので、注釈をつけます。

コンセプトを設計するというのは──続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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