小説を書くために宇宙を見上げよう 01 他のカテゴリーの論理を文学に対比させる 山川健一
──小説という表現ジャンルは、何もかもを飲み込もうとするのだ。人間の悲劇や喜劇、周囲の大切人な人達の人生そのものを飲み込もうとする──
次代のプロ作家を育てるオンラインサロン『「私」物語化計画』会員用Facebookグループ内の講義を、一部公開いたします。
ご興味をお持ちの方は、ぜひオンラインサロンへご参加ください。
→ 毎週配信、山川健一の講義一覧
→ 参加者募集中→ 参加申し込みフォーム
2025年10月10日
特別公開:小説を書くために宇宙を見上げよう 01 他のカテゴリーの論理を文学に対比させる 山川健一
【他の輝かしい峰々にも目を向ける】
文学とは、1つの論理的な体系である。文学の枠の中にある小説も、文学よりは小さいが独立した1つの論理的な体系だ。物語の構造を学んできた皆さんにとって、これは納得できる事実だろうと思う。
同時に、哲学や思想や心理学もまた、独立した論理的な体系だ。絵画にも、音楽にも、論理的な体系はある。文学史に連なる作家たちは、同時代のこうした別の論理的な体系の成果を貪欲に取り入れてきた。この世界には様々な体系があるが、思うに、小説ほど貪欲な体系は無いのではないか。
ノーベル賞の時期で、坂口志文大阪大学特任教授が、2025年ノーベル生理学・医学賞の共同受賞者となった。
ノーベル委員会のトーマス・パルマン事務総長は、発表の中で「今年の受賞は、免疫系が自己免疫疾患を引き起こさないよう自らバランスを保つ『末梢免疫寛容』の原理を解明した功績による」と述べた。
免疫系は「敵」と「自己」すなわち「私」を区別する根本的な原理だが、これを超えて自己免疫疾患や臓器移植の拒絶反応の抑制などの現代医学の基礎が築かれたことになる。理科系の人達はすごいなと、僕はシンプルに感嘆する。
しかし、例えば、「坂口志文大阪大学特任教授は論文の中でこう書いた」と前置きして論文を全文引用し、「これを読み終えた僕は感動した」と締めれば小説になる。倫理や完成度や文学的な価値の問題はあるが、出来上がった作品をカテゴライズすれば「小説」ということにになるだろう。
小説という表現ジャンルは、何もかもを飲み込もうとするのだ。人間の悲劇や喜劇、周囲の大切人な人達の人生そのものを飲み込もうとする。
はっきり言って、悪魔の所業である────続きはオンラインサロンでご覧ください)
山川健一
『物語を作る魔法のルール
「私」を物語化して小説を書く方法』
(物語化計画ブックス)Kindle版
山川健一/今井昭彦/葦沢かもめ
『AIとの対話で物語のアイデアが広がる
小説を書く人のAI活用術』(インプレス)
Amazon https://amzn.to/4dSXYLr
インプレス https://book.impress.co.jp/books/1124101059