『ソフィーの世界』で学ぶ哲学とファンタジー 1 「あなたはだれ?」「世界はどこから来た?」 山川健一

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「私」物語化計画 2021年9月3日

特別公開:『ソフィーの世界』で学ぶ哲学とファンタジー 1 「あなたはだれ?」「世界はどこから来た?」 山川健一

【なぜ哲学なのか?】

長い小説になればなるほど、登場人物は増える。この登場人物たちが、みんな普通の人たちで、常識的な事しか考えなければ、ストーリーは生まれない。たった1人でもいいから、独特なことを考え、読者の僕らに「なんであんなことをしでかしたんだ?」と疑問を抱かせるような行為に身を投じて欲しい。

読者は自分の根源的な疑問を解決するために、ストーリーにのめり込んでいく。

しかし、例えば10人の登場人物がいるとして、書き手は1人なので彼ら全員の哲学や思想、独特な考え方を編み出すのは至難の業である。

そういうことに初めて気がついたのがゲーテで、彼は謙虚かつ積極的に文学の領域の外にある哲学や思想を学んだ。ホメロスやにルソーに始まり、スピノザ、シラー、さらに同時代のショーペンハウアーの哲学まで吸収したのである。

ゲーテ以降は、小説家が哲学や思想や心理学を学ぶのはごく普通のことになった。

実際問題として、登場人物全員の考えること、つまり哲学や思想を考案するのは非常に大変なので、「考え方」のプロである哲学者や思想家の本を読むのは有益なのである。

つまり手っ取り早い。

哲学は難解である。しかも広範囲に及んでいる。こんなものに入れ込み始めては、小説を書く時間がなくなってしまう。僕の人生に対する基本的な姿勢は「イージー・ゴーイング」なので、ここも省エネで行くことをお勧めしたい。哲学の歴史をざっと拾って見て、興味をひかれるところがあればそこを深掘りすればいいのである。

皆さんに夏休みの課題として『ソフィーの世界』を読んで頂いたのは、哲学のアンチョコとしてこれ以上に優れた本はないからである。一時期世界的なベストセラーになったのもうなずける。

読んでない?

課題なのに?

まだ入手もしていない?

ご安心ください。僕がこの連載でバッチリ解説しますから。ただし、ネタバレになるのでそこはご容赦。ただ、せめて入手した方がいいと思います。電子書籍でも出ているはずです。

そう言えば、最近の小学生は在宅授業が多いせいでiPadを持っている子達が多く、漫画も電子書籍で読むパターンが増えているらしい。それを学校で授業中に読んでいて先生に叱られるケースが多々あるとの事だ。

漫画を読んでいるくらいなら可愛げもあるが、動画を見たりゲームをやったりする子供達もいるそうで、唖然とさせられる。

紙の本ではなく電子書籍を読むのは、自分の部屋を持っている小学生の方が少ない。つまり親がリビングに漫画本が積まれているのが嫌らしい。

コロナのせいで子供達の生活スタイルも急速に変わりつつあるのだろう。

 

【『ソフィーの世界』を読んでみよう】

『ソフィーの世界』は哲学講義の本だが、ストーリー仕立てになっている。ファンタジー小説でもあるわけだ。推理小説といってもいいかもしれない。

このストーリーを読む面白さに引きずられて、読者である僕らは先を急ぎ、結果的に哲学の歴史を理解できるようになっている。

 

■ふたつの設問

ストーリーは、ある日学校から帰ったソフィーのもとに奇妙な手紙が届くところから始まる。

 

「あなたはだれ?」

「世界はどこから来た?」

 

この問いの答えを探すべく、ソフィーは手紙の送り主である哲学者と手紙を通じて哲学の講義を受けることになる。

哲学の講義は古代ギリシャの自然哲学から始まり、ソクラテス、プラトン、アリストテレス、中世を経て実存主義へと続いていく。

 

■知らない女の子宛のバースデーカード

哲学講座が始まったころ、ソフィー宛に、レバノンにいる「少佐」から「ヒルデ」に宛てたメッセージが何度も届く。「ヒルデ」とは誰なのか? ソフィーの世界が混乱しはじめる。

 

ネタバレ

これらはすべて、──続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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