特別公開:特別編・長い小説を書くために6 吸血鬼はあなたのすぐ隣にいる 山川健一

物語とは目的を達成しようとする主人公が、それを邪魔する敵と戦うことによって成立する。そして敵の本質とは恐怖なのである──

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「私」物語化計画 2020年10月30日

特別公開:特別編・長い小説を書くために6 吸血鬼はあなたのすぐ隣にいる 山川健一

物語には主人公が超えなければならない敵が必要である。その敵とは恐怖である。

小説の恐怖の型をスティーヴン・キングは三匹の怪物に喩えた。その三匹から自分の作品を書く前にどの怪物に登場してもらうか選ぶ必要がある。

そして、最大の敵は、隠された父である。

隠された父の発見をテコに力学の逆転を達成する──ここまでが先週の講義ですが、大丈夫ですか?

 

ところで、コメント欄にNさんがこんな書き込みをしてくれた。

書いてあることを理解はできるのですが、そのエッセンスを噛み砕いたうえで、小説として「書ける(アウトプット)」のは全く別物の話で、書きながら体で気がつき実感していく最中なんだと思っています

似たようなことを、映像作家のMさんが前に言っていた。理論を学ぶと実作出来なくなる、と言っていた。

ロジック──理論というものは、常に新しくなる。「都市は言語で出来ている」と言われると誰だって最初はギョッとするだろう。

ジョナサン・カラーに『文学理論』(岩波書店)という本があり、「構造主義」「ディコンストラクション」「フェミニズム」「精神分析」といった理論を解説しており、東北芸術工科大学の文芸学科ではテキストに使っていた。創造的にテクストを読み、それを実作に活かしてもらうためだ。もっとも翻訳に難があり、学生達の評判はあまり良くなかったが、頑張って読めば「理論」というものの変遷がわかる。理論を有効に活用しそれを実作に応用する新しい視点が得られる。

しかし問題なのは、こうした思考のアイディアが不断に革新されていくということだ。ロジック・ジャンキーみたいなことになり「それで?」「君は今幸せ?」ということになりかねない。

構造主義、ポスト構造主義の人達も、きっとそれに疲れてしまったのだろう。

ただしそんな中で、物語論(ナラトロジー)は普遍的な論理を構築したのだと僕は思う。DNAが登場した後でもダーウィンの進化論が普遍的なのとよく似ている。

ただし会員の皆さんが小説を書こうとする時、僕の講義のことは一旦忘れてしまって構わない。しかしそれでも例えば「書き出しはダラダラしていてはまずい、欠落を書かないと」「外圧によって旅立つんだったよな」というような基本的な事柄は、会員の皆さんならもう体が覚えたいるはずだ。それが、物語が血液のように体の中を流れているということなのだ。

それで構造が出来れば、あとは正しい文法に則り、比喩表現を磨きレトリックに磨きをかけていけばいいのだ。ホラー小説に描写は欠かせない───続きはオンラインサロンでご覧ください)

 

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